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CMRなHDDがどんどんなくなっていく [ハードディスク]

WD、256MBキャッシュ搭載のWD Blueシリーズ新6TB HDD
https://pc.watch.impress.co.jp/docs/news/1170883.html

これまでWestern Digital製の一般向けハードディスク「WD Blue」は、2TB(型番の後ろ半分がEZAZの機種)がSMRであり、6TB(型番の後ろ半分がEZRZの機種)はCMRだった。

しかし今回の発表により、6TBもSMRに切り替わる事が判明した。
(今の所「WD Black」は全てCMR)

判明した、といっても、これは既に業界内では既定事項だった事だ。

従って今後さらに容量の大きな機種にまでSMRへの切り替えは拡大していく。

実際既にSeagateは一般向けのBarraCuda(3.5inch)やFireCuda(2.5inch)はほぼ全ての機種がSMRで、CMRはNAS向けのIronWolfのみである。
※カタログ上ではBarraCuda及びFireCudaの一部機種はCMRのままであるようだが、店頭で売られている物はほぼ全てがSMRの機種である。

そして今後は7200rpmのハイパフォーマンス機種やNAS向けなども順次SMRになっていくだろう。

2020/03/02追記。
コメント欄への投稿による未確認情報だが、2TBのIronwolfはSMRに似た独自のTMGR方式が採用されているらしい。なお、TMGRに関する情報は無い。

2021/01/11追記。
コメント欄への投稿で新しい情報が出たので改めてTMGRに関して調べた所、TMGRはTGMRの誤記である可能性が非常に高い事が判明した。
なお、TGMRとはトンネル効果を応用したGMR読み取りヘッドの事で、一般にTMRヘッドと呼ばれている読み取りヘッドだと思われる。

このように元々アーカイブ向けハードディスク用として開発されたSMRが、一般向けのハードディスクにまで浸透してきた事には理由がある。

それは、SMR特有のランダム書き込みが非常に遅い問題が新しい技術によって軽減されつつあるからだ。

その技術とは、具体的にはSeagateの用語で言うと「メディアキャッシュ」というものと、それを活用する書き込みアルゴリズムである。

メディアキャッシュとはSSDのQLC NAND採用機種で使われるSLCキャッシュのようなもので、記録メディアの領域を部分的に違う使い方をするものだ。
ハードディスクのSMRの場合、メディアキャッシュ領域はSMRではなくCMRによる書き込みとなる。

恐らく最外周の一部分がCMRによる書き込み領域に割り当てられていて、この部分は頻繁にランダム書き込みが行われるMBRやインデックス領域と、メディアキャッシュに使われる。
従ってSMRの領域は2TBのハードディスクであれば1.6TBなどのように減っているため、容量一杯にデータを書き込むような場合にはQLC NANDを使うSSDのように挙動が変わって来ると思われる。

ただSSDの場合と違うのは、CMR領域はSMR領域として再利用出来ないだろうという事。
何故ならトラック幅が物理的に違うからだ。
これを変えるとなると物理フォーマットからやり直す必要があるはず。
なので、メディアキャッシュ領域はSMR領域が食いつぶされた後、それ以上の書き込みがあればそのままCMR領域に書き込みが行われると私は想像する。
つまりSSDのようにSLC領域の分書き込み領域の容量が減っているわけではなく、メディアキャッシュ込みでハードディスクの全書き込み容量となるはずだ。

メディアキャッシュの話が長くなった。
要はハードディスクへランダム書き込みが行われると、まずメディアキャッシュにデータが書き込まれる。
そしてアイドル時に順次SMR領域にデータの移動が行われる。
こういう書き込みプロセスを経る事で、ランダム書き込み時の速度低下を抑えるという仕組みである。

また、シーケンシャル書き込みの時は書き込まれるデータの量だけCMR領域に、データの存在しないブロック(≒複数のトラックを束ねたもの)の空き領域があればそこに直接書き込まれるようである。


まあそんな感じで、普通の使い方をしている限りほとんどの場合でSMRのデメリットを体験する機会は無いらしい。

ただしベンチマークソフト等でランダムアクセステストをすると、かなり酷いことになるらしいが。
逆にそんな使い方はまず無いのが普通だという事だろう。


いずれにせよ、今後普通に店で買えるハードディスクは全て、SMRになっていく運命だ。
どうしてもCMRなハードディスクでなければ使いたくない人は、今の内に買って置く事をお勧めする。

2021/01/11追記。
私自身SeagateのSMR記録方式を使ったハードディスクでテストを行っているので、興味がある方は参照してください。

SMRなハードディスク、ST8000DM004を試す
https://17inch.blog.ss-blog.jp/2020-02-13

ST8000DM004を試すその2
https://17inch.blog.ss-blog.jp/2020-02-16

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IronWolfもmediacache付きのSMRだよね?
by お名前(必須) (2019-03-19 15:18) 

98式軍刀

お名前(必須)様、コメントありがとうございます。

ご指摘の件ですが、Iron wolfのデータシートを確認したところ、1~4TBモデルのDRAMキャッシュ容量が64MB、6~14TBモデルのDRAMキャッシュ容量が256MBとなっていますので、あくまで推測ではありますが、6~14TBモデルがSMRであると考えられます。

メディアキャッシュの使い方とSMR採用の意味を考えると、1~4TBへのSMR採用はメリットが薄いため、そのような構成になっているのかもしれませんね。
by 98式軍刀 (2019-03-19 18:46) 

お名前(必須)

2TBのIronwolfはSMRに似た独自のTMGR方式をとっているとのことでした。ご親切なサポート担当からの回答(ホントは非公開なんですけどといいつつ)

どなたかがご覧になった時向けにご参考ください。
by お名前(必須) (2020-03-01 11:21) 

98式軍刀

お名前(必須)様、興味深い情報ありがとう御座います。

非公開という事で、たしかにTMGRについて調べても具体的な内容は出てきませんね。

わからない事だらけで大して書ける事もありませんが、記事に反映させていただきます。
by 98式軍刀 (2020-03-02 20:46) 

nica

約2年前、コメントを含めても9ヶ月前の記事に失礼致します。
記事を拝見させていただいた中でTMGRというものが気になり調べたのですが、あまりの情報の少なさに違和感を覚えました。海外のフォーラムでTMGRについて「高速キャッシュにPMR、残りのデータにSMR」という記述があり、PMRはCMRと同じものなのでこちらの記事のメディアキャッシュの部分で記述されている内容と同一ではないかと考えております。そしてこの技術はTGMRと呼ばれている技術にあたり、Seagate公式の文書にも僅かながら記述されています。自分個人が出した結論としては ”TMGRはTGMRの誤記” です。確実な情報である確証はありませんので参考程度にしていただければと思います。
by nica (2021-01-11 00:30) 

98式軍刀

nica様、貴重な情報提供に感謝いたします。

私もTGMRについて調べましたが、TGMRについて記述のあるSeagateの公式な資料と思われるpdfファイルが複数存在しており、これらの中ではTGMRの定義が二つ存在します。

一つは読み取りヘッドに関する物で、もう一つは記録方式そのものを指しています。


TGMRおよび面密度の向上(読み取りヘッドに関する物)
https://www.magnetics.jp/wp-content/uploads/040825_03r.pdf

SATA Product Manual - Seagate.com(記録方式そのものを指す記述)
https://origin-www.seagate.com/www-content/product-content/skyhawk/en-us/docs/100804012b.pdf


記録方式を指す記述は複数のpdfで存在しますが、これらは単にTGMR記録方式で面密度を高めている、としか書かれていません。

以上の事から、TGMR記録方式とはTGMR読み取りヘッドを使った垂直磁気記録方式又は瓦記録方式の事を言うのだと思います。
(TGMR読み取りヘッドは他のハードディスクメーカーではTMR読み取りヘッドと言われている物だと思われます。)

以上、他に情報もなさそうなので、TMGRはnica様がご指摘されたようにTGMRの誤記だと私も思います。

早速記事にも反映させておきます、ありがとうございました。
by 98式軍刀 (2021-01-11 18:50) 

nica

返信いただいてから元のコメントがわかりにくいと気づいたので補足しておくと、海外のフォーラムとはSeagate公式ではなく第三者の投稿によるものです。その海外の方曰く、上記コメントの方と同様Seagateサポートからの回答らしいです。
仰られている通りTGMRに関する情報は異様に少ないです。日本では度々某価格サイト筆頭に論争になっているようですが。
話が早いので具体的な型番を出してしまうとST4000DM004について少し情報を集めてみるとCMRであるとサポートから回答された例や、記録方式については濁された例、DM-SMRだと主張している例、件のTGMRであると主張する例等もはやどれが正しいのかわからない状態です。キャッシュ容量からして消去法的にCMRはないと思いますが、果たしてTGMRという技術が何者なのか公式の資料が乏しいので、現状でこの議論に終止符を打つのはなかなか難しそうです。SMR初期でやらかした過去から情報を開示したくないのだろうかと要らぬ勘繰りをしてしまいます。
TGMRについて公式サポートが口を滑らせた可能性もあります。が、そもそもクレームや相談対応が本来の仕事である人がどこまで製品仕様に詳しいのか疑問で、自分が先のコメントで示した「TGMRはCMRキャッシュを用いたSMRディスク」という話の信憑製は微妙です。自身で書いておきながら曖昧な情報で申し訳ない限りです。
以下、TGMRとは全く関係のない書き込みです。
追記リンク先のSMRのベンチマーク記事を拝見させていただきました。SMR/CMRについて、というよりも最近のHDDの動向については自分も興味を持っており、なかなか楽しみながら読ませていただきました。東芝もランダムライト時DM-SMRはCMRより遅いとはっきり言っちゃってますし、やはり現状の技術のSMRに突っ込むべきではないのかもしれませんね。
by nica (2021-01-12 01:22) 

98式軍刀

勝手ながらnica様のお話を整理させていただきますと

・海外のフォーラムの件

所詮は素人の投稿ですので、あくまで参考程度にすべきだと思っています。
ですので、先の返信ではあえて触れませんでした。
TGMRとメディアキャッシュ技術の混同についても、TGMRは何の略なのか、と考えれば答えは自明です。


・ST4000DM004 がCMRかSMRかという議論

現在SeagateのハードディスクについてCMRかSMRかというのは以下のサイトで公表されています。

ドライブに搭載されている技術
https://www.seagate.com/jp/ja/internal-hard-drives/cmr-smr-list/

つまりBarraCudaシリーズであるST4000DM004はSMRであると結論出来ます。
SeagateのサポートがCMRと言ったという話も、nica様の仰るように公式サポートが口を滑らせたのだと思います。

また、某価格サイトの議論も拝見しましたが、アレは気にしない方が良いと思います。
プラッタに関する話一つ取っても、Seagateがプラッタを内製している事すら知らない人達ですから。
ちなみに昭和電工のプラッタは大半が東芝向けで、世界的シェアを見ると3割弱程度らしいです。


・TGMRについての結論

本来のTGMRは「Tunneling Giant Magneto resistive」の略称であり、現在一般にTMRと呼ばれている読み取りヘッドの事です。
従ってSeagateのカタログやマニュアルに載っている「TGMR」は、マーケティング上の理由で使われている特に意味が無い単語であると考えるのが正しいように思えます。


という事で、論点があやふやである所を私なりに整理してみましたが、いかがでしょうか。


by 98式軍刀 (2021-01-12 20:39) 

nica

毎度ながら拙い文章でわかり難く申し訳ないです。
先のコメントではTGMRが記録方式の一種である可能性を考えて書いていたため、98式軍刀様が出した「TMRのことである」という結論からかなりずれたことを書いていました。ややこしい上にその後さらに情報収集したのですが、記録方式である可能性もほぼ0に等しいと自分でも納得致しました。大変失礼致しました。"TGMR recording technology"と少々ややこしい書き方をしていたので少し期待(?)してみたのですが...と要らぬ言い訳をしておきます。
ST4000DM004について、TGMRが言及されている1例を挙げたのですが、TGMRがTMRのことであるならば公式資料通りやはりDM-SMRで間違いないと納得しました。
カスタマーがあくまでヘッドであるTGMRについて利用者に対して話すか?という疑問は少し残りましたが、深い事情はないオチが読めるので、かなり自分が遠回りをさせてしまいましたが最初に出されていた結論として自分も解釈したいと思います。
曖昧な情報のタレコミ、その後話をややこしくしてしまい申し訳ありません。また、長々とお付き合いいただき感謝致します。
by nica (2021-01-13 20:05) 

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