3dfxは復活できない [ハードウェア]
一週間ほど前、ネット上ではこんなニュースが話題となっていた。
“3dfxが復活する”
と。
3dfx 復活
https://duckduckgo.com/?q=3dfx+%E5%BE%A9%E6%B4%BB&atb=v265-1&ia=web
情報の出所は「3dfx Interactive の公式アカウントを自称するTwitterアカウント」。
だが3dfxは20年ほど過去にNVIDIAによって買収され、消滅している。
また、その“公式Twitter”で開示された、復活にあたって投入される製品も理解出来なかった。
例えば“3dfx Voodoo 6 PCI”。
Voodoo 6はともかく、“PCI”は無い。
他にもスマーフォンなど、再スタートするには幅広いジャンルの製品展開はあまりにも信憑性が無い。
これらを見て私は「ああ、これは偽物だな」と思った。
そしてその後、実際にこのTwitterアカウントは消え、嘘が証明された。
ところで3dfxといえば、1990年代中盤から2000年頃まで一世を風靡していた、グラフィックチップを開発する伝説的な企業。
3dfxが開発し、1995年に初めて登場したVoodooという3D専用のビデオチップは、当時3D対応ビデオカード市場のシェアを瞬く間に奪い、専用のAPIである“Glide”は3Dゲーム業界の標準APIとしての地位を確立するまでとなる。
そして続くVoodoo2は、SLIというビデオカード2枚を連携させて画面描画を行うパソコンの歴史上初めての機構で他の追随を許さない高画質と高性能を発揮し、3dfxの地位をさらに盤石なものとした。
だがその後Micro$oftが開発した3D描画APIであるDirect 3Dが一定の完成度に達すると、ゲーム業界は対応するチップがより多いDirect 3Dを主軸に使い始めるようになってGrideは使われなくなっていく。
そして3dfxは製品開発の遅延と会社経営の失敗を経て衰退し、NVIDIAによる買収という形で消滅した。
そんな3dfxだが、私は3dfxの製品が好きで、Voodooを搭載したビデオカードも購入した。
以下は私が現在所有するVoodoo搭載のビデオカード。
・Voodoo Banshee
最初に買ったVoodoo搭載のビデオカードで、Diamond Multimedia Systemsの
「Monster Fusion」。
搭載するチップは「Voodoo Banshee」。
Voodoo Bansheeは3dfxが開発した中で初めてワンチップで2Dと3Dに対応したものである。
出た当時は高性能が大変話題となって大ヒット、それまで3dfxの製品に興味を持たなかった私を
3dfxファンにした製品。
・Voodoo3 3000
Voodoo3というチップを搭載する、2番目に買ったVoodoo搭載のビデオカード。
他社のハイエンドビデオチップよりも高性能で、これも大ヒットとなった。
しかしライバルの追い上げも厳しい中で販売開始が遅れ、3dfxには大きな痛手となる。
またこの製品以降3dfxは自社のビデオチップを外販する事をやめ、搭載するビデオカードを
自社だけで生産するようになって販路が細くなり、これも仇となって衰退を始める。
・Voodoo5 5500
3dfx最後の製品となった、VSA-100というチップを二つ搭載するビデオカード。
恐らくパソコン用ビデオカード市場で初めて、補助電源コネクタを装備したビデオカードである。
相変わらずGrideをメインとしたAPIで設計され、スペックの豪華さとは裏腹に時代遅れな仕様で
ライバルに一歩及ばない微妙な性能であり、またDirect 3Dへの対応もあまり良くなかった。
開発の遅れが長引いた事もあり売れ行きは非常に悪く、3dfxの命運に止めを刺す製品となった。
というわけで。
私は3dfxに復活して欲しいという願望を持っているが、もはや3dfxの魂はこの世から消え去っているのでそれは絶対にありえない。
結局のところ、3dfxとVoodooはパソコンによる3D描画がまだ発展途上の過渡期に出たから成功したのであって、今となっては古き良き時代の遺物なのである。
NVIDIAの勢いを止められるか!? Voodoo5 5500登場
https://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/20000616/hotrev65.htm
2021-08-14 20:22
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コメント(2)
SLIという機能はVoodoo Graphicsの時点ですでに存在していたので、Voodoo2からではなかったと思いますよ。
初リリースの製品ですでに実装していた、そこが3dfxの凄い所でもあるのですが、どうも適切な評価がされていない気がします。
wikipediaも英語版SLIの項目を見るとしっかり記載があります。
またTMUチップをドーターカードで増設し3チップ構成という、まるでVoodoo2のようなVoodoo1カードもありました。
数か月前にヤフオクで発見したのですが、かなり高価になっていましたね。
by 3dfx fan (2022-07-05 11:22)
3dfx fan 様、コメントありがとうございます。
そして私の間違いについてご指摘くださった事、深く感謝いたします。
さて、ご指摘の内容についてですが、私自身調べなおしてみました。
するとQuantum3Dから販売されていた、Voodoo1を使ったSLI機能採用のカードを見つける事が出来ました。
ただ、英語版WikipediaのSLIのページを拝見しましたが、該当する箇所には
“SLI from 3dfx was introduced in 1998 and used in the Voodoo2 line of graphics accelerators.”
(3dfxのSLIは1998年に登場し、グラフィックアクセラレータのVoodoo2シリーズで採用された。)
“However, the original Voodoo Graphics card and the VSA-100 were also SLI-capable.”
(ただし、オリジナルのVoodoo GraphicsカードやVSA-100もSLIに対応していた。)
とありますので、この記述だけでは“SLIという機能はVoodoo Graphicsの時点ですでに存在していた”という解釈は難しいです。
その証拠に、一般にVoodoo1 搭載のビデオカードにはSLI用の端子が存在しません。
そしてSLI対応のVoodoo1搭載カードはあくまでも特殊なカードであり、一般にはほとんど出回っていなかった、という事実です。
これは私の憶測ですが、当初SLIというアイデアはあったかもしれませんが、3dfxでは最初の製品で利用する事は考えていなかったと思います。
そして今回調べた中で、Voodoo1 のSLIカードを販売していたQuantum3D という会社が3dfx からスピンアウトして設立された会社であり、アーケードとシミュレータ市場向けカードを開発していた、という事を初めて知りました。
もしかすると、3dfxのSLI自体、Quantum3Dからの技術的なフィードバックがあっての物かもしれませんね。
という事で、Voodoo1 のSLIについてですが、パソコン向けの製品はほとんど無かったのではないかと思います。
そうなると私の書いた「パソコンの歴史上初めての機構」はVoodoo2 から、で間違いはありません。
一方で史上初のSLIは、Voodoo1 を採用したQuantum3D のObsidian シリーズである、という事になりそうです。
by 98式軍刀 (2022-07-07 20:22)