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AGESA 1.0.0.6のDDR4 4000対応について考えてみる [ハードウェア]

昨日AMDよりリリースが発表された、RYZEN用の新しいファームウェア「AGESA 1.0.0.6」だが、更新された内容にDDR4メモリの対応周波数が4000Mhzにまで上がっている事が含まれているため、こうまでメモリの動作周波数を上げようとする理由がなんなのか考えてみた。


AMD,Ryzen向け新ファームウェア「AGESA 1.0.0.6」のリリースを発表。メモリはDDR4-4000対応に
http://www.4gamer.net/games/300/G030061/20170526032/


現在AMD製のCPU、RYZENではDDR4 2666まで正式に対応し、オーバークロック動作では最新のアップデート「AGESA 1.0.0.6」を適用する事でDDR4 4000まで対応する事になっているが、DRAMモジュールの標準規格化を担うJEDECで正式に規格化されたDDR4メモリモジュールの最高周波数は2400Mhzで、3200Mhzまで設定されているが、2017年5月現在、実際に市販されるモジュールは2400Mhzが最高で(恐らくIntelのCPUがDDR4 2400までしか対応しないためと、高クロック動作のチップが十分に生産できないためと思われる)、それ以上の周波数で動作するとされるモジュールは規格外のオーバークロックメモリとなる。※2017/5/30 事実と異なる説明を修正。
※オーバークロックメモリとは、高い周波数で動作する事が確認されたDRAMチップを選別し、それを載せたモジュールをさらに選別して高いクロックで動作する“可能性”を持っているとされるメモリモジュール。製造に手間がかかり、また量産出来ないために高価である。

オーバークロックメモリであるので、当然動作周波数が表示通りに出る保証はない。実際DDR4 3200と書かれたモジュールが2400以下でしか動作しないという事も当たり前に起きているし、2666Mhz以上での動作にはDDR4の規格で定められた1.2Vよりも高い電圧をかけなければならない事がほぼ当たり前になっている。

このような状況になっている理由を知るためには、AMD側の都合と、DRAMの標準規格をまとめているJEDECの都合と、両面から考えなければならない。


というわけでまずはAMD側の都合を考えてみよう。

AMDがこんな無謀とも思える「対応メモリーの高クロック化」に突き進むのは、RYZENの仕様に寄るところが大きいと私は考えている。

そのRYZENの仕様というのは「Infinity Fabric」の存在で、この「Infinity Fabric」とはCPU内でデータを相互にやりとりするためのもの。RYZENは4つのCPUコアを一つのモジュールとして二つのモジュールを1コアの中に収めているのだが、この二つのモジュールは「Infinity Fabric」で接続されている。
そしてCPU内にちりばめられた多数のセンサやメインメモリなどの周辺デバイスも「Infinity Fabric」で接続されているし、恐らくAPUではCPUとGPUの接続にも用いられるだろう。

「Infinity Fabric」の詳細はこの記事が詳しい。

西川善司の3DGE:「Ryzen」は何が新しくなったのか。そのマイクロアーキテクチャに迫る
http://www.4gamer.net/games/300/G030061/20170228119/

それゆえに「Infinity Fabric」はRYZENの性能に大きく影響を与え、ある意味ボトルネックになっているのだが、「メモリコントローラの周波数に同期して動く」という仕様になっているために、メインメモリの周波数を上げるとCPUの性能を底上げする事が可能になる、というわけだ。


このような仕様であるため、メモリアクセスのレイテンシを増やして実効転送速度が上がらなくとも、メモリの動作クロックを上げたほうが性能が出る場合があるという現象が起きている。
ただし、レイテンシを増やしすぎるとメモリからのデータ転送を待つ時間が増えるため、メインメモリに頻繁に細切れのアクセスが発生するようなケースでは逆に性能が落ちる可能性があるのだが。

さらに、現在のRYZENは主な顧客が自分で部品を買ってパソコンを組み立てるという、あまり一般的ではないマニア層向けの製品である事も無視出来ない。であれば尚更、性能を追求するためのオーバークロック競争に拍車をかけ、盛り上げる事がAMDにとっての利益に繋がる。
この事もAMDが徒にメインメモリの高クロック化を押し進めようとする理由だと思われる。



さて、次はJEDEC側の都合を考えてみる。

JEDECとしては動くかどうかもわからない高クロックのメモリモジュール規格を標準化など絶対に出来ない。JEDECが規格化するならば、いかなる状況においても規格の範疇における使用であれば規格通りの動作をしなければならないからだ。

例えば店頭で「DDR4 3200」として売っているメモリモジュールは、どのパソコンに取り付けても自動的にその動作周波数で動き、万が一にもエラーなど起こしてはならない。(例外的な相性問題は除外する。)

現時点では、すでに技術的限界に近い(チャネル当り2モジュールというのが厳しいらしい)のがDDR4 2400という事で、実際にRYZENでDDR4 2400での動作がサポートされるのは2本あるメモリチャネルに1本のメモリまで、つまりスロットが4本あっても2本しか使えないし、4つのメモリスロット全てを使う場合、シングルサイドと呼ばれる片面だけにチップの載ったメモリモジュール4枚の場合でDDR4 2133までしかサポートしない。正式にDDR4 2666に対応しているにも関わらず、だ。
もしメインメモリの量を32GBを超えるほど必要とする場合(具体的には48GBか64GBの二通りになるが)、AMDがRYZENで動作すると保証できる動作周波数はDDR4 1866Mhzまで下がってしまう。


こうした事情により、まだしばらくの間はDDR4 2400までが標準規格のモジュールになり、それ以上のクロックで動くものは動作保証の無いオーバークロックメモリという事にするしかない。

この状況は何時動くかはわからないが、少なくともDDR4 2666以上の高クロックでの動作が安定したチップが選別品ではなく量産品として生産されるようになるまでは、標準規格のモジュールは最高の動作クロックがDDR4 2400のままになると思う。



以上の事から、AMDとしては現状のお祭り騒ぎの火に油を注ぎたいという事、そして高クロックメモリ使用によってベンチマークのスコアをもっと上げたいという事、さらに「Infinity Fabric」の仕様上メモリクロックは高いほうが都合が良いので、JEDECはもとよりDRAMメーカーやメモリモジュールメーカーに高クロックメモリの需要というものを見せ付けて、早く標準規格化して欲しいのではないかと私は思った。

そして今までDDR4メモリの市場を引っ張って来たのはDDR4をAMDよりも早く採用したIntelなので、DRAM標準化の主導権を引き寄せてなんとか自分達に有利な状況を作ろうと、そういう活動の一環ではないかとも思われる。


参考:

DDR4のB1ガーバーとは何か
https://17inch.blog.so-net.ne.jp/2016-03-05

今DDR4メモリーを買うべきか、我慢すべきか
https://17inch.blog.so-net.ne.jp/2016-05-22

今DDR4メモリーを買うべきか その2
https://17inch.blog.so-net.ne.jp/2016-05-23

RYZENのメモリ周りの問題
https://17inch.blog.so-net.ne.jp/2017-03-21

RYZENのメモリ周りの問題その2
https://17inch.blog.so-net.ne.jp/2017-04-09

デュアルランクとか意味不明なんだけど
https://17inch.blog.so-net.ne.jp/2017-04-13



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