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最近のSSD情勢その2 [ハードウェア]

前回は3D NANDの話を主にしたが、今回は東芝最新製品である15nmという最新プロセスを使用したNAND Flashと東芝が発表したTLC NAND、Samsungの3D V-NANDを含めたSSD用のコントローラーについて。

まずは東芝15nmのNAND Flash。
この15nmというプロセスは、現在NAND Flashがまともに動く限界と言われている最先端プロセスである。何故かというと、隣接するメモリーセル同士の間隔が狭くなると電気的な干渉が起きて、データが化けるという現象が起きやすくなるから。実際には1世代前の19nmチップでもすでにその現象は起きる可能性があって、データ化けしないような改良がされたのか、それとも単に許容範囲のデータ化けを放置しているのかはわからない。

それからその1でも書いた耐久性と信頼性について。
ここも東芝がすごいのか、量産に漕ぎ着けたという事は、少なくともこれまでの19nmプロセス製品に近いレベルだと考えられる。何故なら、19nm製品を使ったSSDですら、すでにSSDとしての耐久性が「この程度でいいの?」という疑問符が付くレベルだったからだ。ただし一般的な使い方で保証期間の3年持つのならハードディスクと変わらないじゃないか、という解釈も出来るが。ハードディスクの場合は上手に使えば10年以上壊れないからなぁ。

それからSSDに搭載されたNAND Flashの寿命はSSD一個一個すべて違う。中にはハズレもあるのだ。10年もつSSDのハズレが5年とすれば、3年持つSSDなら1年半だとしてもおかしくはない。
ハズレを引いても5年持つなら納得できるが、それが1年半だとしたら納得できないだろう。そして新製品の15nm製品がこれ以下だとしたら、そもそも製品として成り立たないはず。だから、15nm製品でも19nm製品並みの耐久性と信頼性はあるのではないかと。私の勝手な想像でしかないが。

というわけで、どんな手品を使っているのか、研究開発の努力の成果として東芝の15nm NAND Flashは2004年4月末から日本国内の工場で量産開始され、最新のSSD製品に搭載されている。


続いては東芝のTLC NANDについて。

TLC NANDと言われても?な人が多いと思う。過去の記事でも書いたかもしれないが、ここでも説明しておこう。現在のSSDに使われるNAND Flashは、一般向け製品のほとんどがMLC NANDと呼ばれる製品で、これは1個のメモリーセルに2ビット、つまり4段階の電圧を記録できる。これに対しTLC NANDは3ビット。つまり8段階の電圧を記録できるという事で、単純に言えば同じメモリーセル数のチップならTLCはMLCの2倍の記憶容量を得られる。

しかし当然デメリットはある。TLCはMLCに比べてデータが化けやすく、寿命も短いのだ。
過去にはSamsungがTLC NANDを使ったSSD(840シリーズ)を製品化しているが、あれは様々な工夫でMLC並みの耐久性を実現していた。今回の東芝の製品の場合でも同じ様に様々な工夫があると思う。
このチップがMLCと同じ15nmというのだからさらに驚きだ。

まあ、従来のNAND Flashに関する信頼性確保のセオリーから言って、やっている事は基本MLCとそう違わないとは思う。違うのはそういった仕組みに対する金のかけ方。そこのコストがチップ単価の安さをどの程度食っているのかはわからないが、MLCよりも安価な製品として売る事が出来る程度には安く上がったという事なのだろう。


東芝はこれらの製品に加えコントローラーチップも同時に製品化している。
ちょっと前の東芝製SSDは自社開発のコントローラーではなく他社製品を使っていたのだが。それ以前は東芝製コントローラーが存在したので、コントローラーチップの自社開発をやめたと思っていたらコレである。
これも私の勝手な想像ではあるが、15nmのNAND Flashを製品化するに当たり、従来のコントローラーではSSDとしての信頼性と耐久性を確保する事が出来なかったのだと思う。


というわけで最後にNAND Flash コントローラーについて。

NAND Flash自体には読み書きのインターフェイスしか付いていないので、そこにどうやってデータを読み書きするのかという操作に別のチップが必要な仕様となっている。

最も単純なのはUSBメモリー用で、かなり安く作っている代わりに速度と信頼性が低い。
SDカード等のメモリーカード類も同様だが、SDカードの場合はコントローラーがカード内ではなく機器側に付いている。その代わりガーベジコレクション等の機能を持った簡素なコントローラーをカード内に内蔵する。

SSD用のコントローラーはこれらと比べてはるかに高度で複雑なものだ。
かつては様々な汎用CPUが用いられていたが、現在ではスマホの心臓部と同じARM系のCPUを核としたコントローラーが主流となっている。そしてコントローラーとしての機能はソフトウエアで賄っている。SSDのファームウェアがそのソフトウェアに当たる。もちろん、特定の機能をCPUとは別のハードウェアとして搭載してもいるが、ハードウェアに製品化の後に見つかったバグを修正する必要が出た時のためにもソフトウェア処理にしている場合が多いようだ。

そんなSSD用コントローラーの機能は基本的にUSBメモリーの物と大差ないが、処理の複雑さと処理速度が違う。中でも読み書き速度の向上のため複数のチップを並列に読み書きしたり、書き込み速度が極めて遅いNAND Flashの特性を隠蔽するためのキャッシュ制御であるとか、寿命と信頼性確保のためのウェアレベリングがより厳密にされるなど。エラー訂正もかなり高度なものが用いられ、NAND Flashのセルが少々壊れてもまったく問題にならないレベル。さらにもしエラー訂正の限界を超えて読み書き出来ないブロックが出ても、予備領域に再配置してエラーを起こさない。
そしてこれだけの処理を行いながらSATAの限界を超えるデータ転送速度を誇っている。

現在ではこうしたコントローラーにもTLCに対応した物が出るなどしている。
今年発表された東芝のコントローラーも、TLCの特性に合わせた高度なコントローラーであると思われる。

TLC NANDの耐久性を3倍に引き上げるSATA3.0コントローラ、Silicon Motion「SM2256」

一方で従来のAHCIの仕様に基づいたコントローラーは終息を迎えようとしている。
現在は元々ハードディスクの仕様に合わせて作られた、AHCIという仕様に合ったコントローラーが使われているが、SSDの速度が向上した結果AHCIの仕様そのものがボトルネックになりはじめたからだ。
すでに新しいSSD用コントローラーの仕様として「NVM Express」というものが策定されていて、SSDのインターフェイスもSATAからPCI-Expressに直結する方向に変わりつつある。
サーバー分野ではすでに移行が始まっていて、今後数年の間にはデスクトップやノートパソコンにも採用され始めると思われる。

Marvell、PCI-Express3.0対応のNVMe SSDコントローラ「88SS1093」発表

このMarvellのコントローラーは、Samsungの3D V-NANDや東芝のTLC NANDにも対応するようである。
素晴らしい。


オマケ。

MLCとTLCがそれぞれ2bitと3bitなら、1bitのNAND Flashを使ったSSDは無いの?という疑問を持つ人は当然いると思うのでここで紹介。

1bitのNAND FlashはSLCといって、当然今でも手に入る。
お値段はMLCの数倍もするが。
最新の製品情報としてたまたま見つけたのでここに記す。

独自NAND「A+ SLC」モデルも用意されるエンタープライズ向けSSD、ADATA「ISSS312」シリーズ

一応他のSSDを売っている会社もSLCモデルは存在するとおもうが、ほとんど一般に流通はしていない。東芝のつい先日8月5日に発表された資料にもSLC NANDとエンタープライズ向けSSDの記述があるが、東芝のSLCモデルは秋葉の情報でも見た事が無い。

信頼性も耐久性もMLCやTLCとはケタが違い、ついでに速度も速い、主にエンタープライズ向けというSLCなSSD。
一般消費者は今やほとんど手にする機会の無いSLC NAND Flashの製品の一つである。

かつてはNAND Flashの主流であったSLC NANDであるが、高価なためにあまり普及しなかったという不幸な歴史を持つ(昔はフラッシュメモリーが高価なのでフロッピーディスクに記録するデジカメすらあった)※。とはいえ初期のフラッシュメモリー、デジカメ用のコンパクトフラッシュとかSDカードの大半はSLC NANDだったので、買った事がある人は多いと思うが。
その後MLCが登場し主役の座を奪われ、さらにその後携帯端末の爆発的な普及による需要増で生産量が増え価格が下落したが、同時に大容量化も求められたためついに主流の座への復活は無かった。さらに不幸。

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