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最近のSSD情勢その1 [ハードウェア]

最近のSSD情勢、とはいっても、私の話は新製品がどこから出たとか値段がいくらとか、そういうのではない。
主に中身のNAND Flashやコントローラーの話題が中心となる。

現在のSSDは、ほぼ全てがNAND Flashを記録媒体としている。
そのNAND FlashをSSD用に供給している会社は淘汰が進んで、現在Samsung、東芝、Micronの3社のみ。現在でもNAND Flashを生産する会社は他に数社あるが、SSD用となると数や品質とコストの問題で最先端の技術が必要になり、それに追随出来る企業は限られるからだ。

で、この3社はNAND Flashの弱点、微細化を進めるほど寿命と信頼性が落ちる事に対する答えを各社持っているわけだが、答えそのものは3社とも同じ。違うのは何をどの程度までやっているか、だ。
その答えとは簡単に言うと以下の通り。

1.材料の工夫
2.設計の工夫
3.コントローラーの工夫(読み書きとエラー訂正アルゴリズム)
4.NANDの基本構造を平面から立体に変更(3D NAND)


3社の中で現在3D NANDを製品化出来ているのはSamsungだけである。
残りの2社はチップ当たりの容量増大のためさらなる微細化(15~16nm)を選んだ。この辺り、各社の各技術に対する力の入れる分野の違いが出ている。


3D NANDについては知っている人も多いだろうが一応説明しておこう。
現在の半導体はシリコン基盤に平面的に回路を並べている。NAND Flashもその例外ではなく、平面に整然とメモリーセルが並んでいる。いわば平屋建ての住宅街である。それに対し3D NANDは高層マンションを平面に並べるようなもので、現在Samsungが製品化しているものは32階建て(データセンター向けは24層)という事だ。

2d_3d.png

単純に言って微細化レベルが同じならば、積み上げた階層の分容量を増やす事が出来る。
が、事はそう単純ではない。事実、従来平面に並べていたものを立体的にするだけで半導体製造の手間とコストはハネ上がる。より高コストな最先端プロセスではチップの単価が高すぎて売れないという事にもなる。
恐らくSamsungがいち早く製品化出来たのも為替レートや韓国政府の財閥優遇政策の関係でコスト高をかなり吸収できるからという側面があると思われる。もちろん東芝がSamsungに対して遅れている理由は日本企業の悪いクセで仕事が遅いだけ、という事もありえそうだが。

話が逸れたので元に戻そう。
3D NANDの大きな特徴としては、チップ当たりの容量を増やしやすい(つまりメモリーセルの数を多く出来る)という事以外にも、寿命と信頼性が高いという事がある。
これは詳細は省くが、メモリーセルの体積が大きく出来る事と、電子の通過点であるゲート酸化膜の面積を広く出来るから。たぶん面積辺りの電子通過量で劣化速度が変わるのだと思う。

メモリーセルの体積はデータの保持能力に関係する。
NAND Flashは時間と共に蓄えた電子が少しずつ減っていく。かつては10年消えないと言われたものだが、現在は新品でも精々2~3年、数年使ってゲート酸化膜が劣化したものは1日と持たない。だからSSDは多くの製品が保証期間を3年以下としている。その点Samsungの3D NANDを使ったSSDは10年保証だ。
従って今後製品化されるであろう東芝やMicronの3D NANDを使ったSSDも、同様に10年保証となると思われる。

3d_nand_technologies.jpg
各社の3D NAND。その基本構造は似ている部分もあるが、全体ではかなり違う。

さて。
最後に、多くの人が気になる速度について。
現在のSSDはすでにピークの速度がSATAインターフェイスの限界に達している。
また、速度自体がもう飽和に近付いていて、これ以上速くしてもデメリットを甘受してまで一般消費者に利益があるのか?という段階になりつつある。もちろん必要な分野(ベンチマークオタクの事ではない)ではまだまだ速度が足りないくらいなのだが、一般向けのパソコン用SSDとしては、NAND Flashの劣化要因となる読み書き速度向上は一部の例外を省いてこの辺りで一休みになるかもしれない。

この流れは3D NANDを使った製品にも出ていて、あるベンチマークの結果によると旧製品との速度差はほとんど無い。それどころか微妙に遅い結果すら見られる。もちろん全体的には微妙ながら速くなっているのだが。

その代わりにIOPSという、一秒当たりに処理できるSSDへのアクセス速度が上がってはいる。
容量の大きなデータの転送速度よりも、小さなデータをランダムに多数アクセスする場合の速度の方が実際のSSDを使ううえでのボトルネックになっているから。

とはいえ、今後M.2やSATA Expressなどの普及具合によっては、速度競争が再加熱する可能性はある。何故なら、現在のコンピューターにとって最大のボトルネックはHDDやSSDなどのストレージだからだ。ここが改善されると処理速度の向上だけでなく省エネにも繋がる。(とはいえインターフェイスの速度が上がると、インターフェイスそのものの消費電力が増えてしまう。インターフェイスのコントローラーや通信プロトコルなどの改善で消費電力を下げる事は出来るので、そういった改良は欠かせない)
将来にはメインメモリーとストレージの境界が無くなる可能性(MRAMなどの次世代不揮発メモリの普及)があるので、NAND Flashを使ったSSDはそれまでの命かもしれないが……

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