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Raven Ridgeが正式発表された [CPU]

もう数日前のことだが、AMDは2017年10月26日にZENコアを用いたAPU“Raven Ridge”を正式に発表した。

名称もコードネームの“Raven Ridge”や過去に発表された“Ryzen Mobile”ではなく、「Ryzen Processor with Radeon Vega Graphics」と長くて説明的な名称が正式らしいが、長すぎるので業界では今後も“Raven Ridge”が普通に使われるかもしれない。


この漸く正式発表(とはいえ発売はまだ先)された“Raven Ridge”、詳細についてはパソコン関係の各情報サイトなどで詳しく説明されているのでここでは省く。

おおまかな要点だけ書くと

・中身はZEN(CPU)+VEGA(グラフィックコア)
・当面TDP15Wのモバイル向け製品のみ出荷
・搭載される製品は今年末以降に登場するが、十分な供給は2018年以降

こんな感じか。

搭載するノートパソコンはしばらくの間は品不足で、デスクトップ向けは早くても春以降か。
ヘタすると来年春まで搭載ノートパソコン自体数が少なく、デスクトップ向けが出てもOEM供給優先で自作用部品としての販売は秋(2018年9月以降)まで待てとかなるかもしれない。


性能に関してはAMDが公表するベンチマークの数字を見る限り、過去のRYZENとVEGAの評価通りの高性能ぶりである。

大雑把に言えばデスクトップ向けRYZENとVEGAのスケールダウンなわけで、それをIntel製モバイルCPUと比較すればそれなりの結果になる事も当然と言える。
今までのBulldozer系コアを使ったAPUも実用上十分な性能を持ってはいたが、ベンチマークではIntelに及ばず、消費電力も多めであった事を考えると、まさに奇跡といえるほどの性能だ。

デスクトップ用ではIntelはRYZENを超える性能の新型CPUを出してきているが、モバイル向けに関してはこらからとはいえ、1年くらいの間はAMDが性能的優位な状況を維持できるかもしれない。これはZENコアの性能もさることながら、VEGAの存在が非常に大きい。


消費電力の問題については、グラフィックコア内蔵CPUの需要は大半がノート型パソコンのようなモバイル向けなので、省電力機能をベースとなったデスクトップ用RYZENとVEGAよりもかなり充実させている。これは消費電力が多くてモバイル向けへの転用に苦労した、Bulldozer系コアのAPU開発で培った技術が最大限に発揮され、またそれを発展させた結果だと思う。

TDPは15Wと、これまでのAPUでは難しい領域にいとも簡単に到達した感じがするが、全てのコアに100%の負荷をかければ恐らく50Wは下らない電力を消費するはずで、これは省電力機能を使って不要な電力消費を徹底的にカットする事で15WにまでTDPを下げているのだろう。Web閲覧や文書作成程度の用途では10Wを余裕で下回り、もしかすると5W以下にまで消費電力は下がるかもしれない。

ただし、こうした一般的なパソコン向けCPUの省電力機能は、現在高性能化と共に増大する消費電力自体を削減するようなものではない。だからターボモードのような動作周波数を上げるモードが動作する場合は、当然にそのまま消費電力と発熱量の増加という現象を引き起こす。もちろん“平均15W以下に発熱量を維持する”ために動作周波数を落としたり動作するコアを減らしたりしているものを、動作周波数を定格の上限(Ryzen 7 2700Uなら2.2GHz)まで上げたり休止状態から起こすだけでも消費電力は大きくハネ上がる。これは周辺IO(メモリやストレージ、USBやネットワークなど)も当然に含まれるだろう。とにかくあらゆる回路を、必要な時だけ電力を送り、動かすにしても必要最低限の電力で済むように調整しているわけだ。

このため、省電力機能は消費電力と発熱のバランスをコントロールしているだけ、という見方も出来る。実際にはCPUやGPUと周辺回路そのものをブロック単位で休止させる事でその部分の消費電力を限りなくゼロにまで落とす事までしているが、これは単に働いていない回路に電流が流れる事を遮断しているにすぎないので、全ての回路が働く必要に迫られれば相応の消費電力になってしまう。
特に性能に直結するCPUとGPUの各コアは、ひとたび動けば消費する電力が大きいためにあっという間にコアの温度が上昇する。するとTDPの枠内に収めるため、どうしても動作周波数を落とさざるを得ない。

従って、実際の製品では製品ごとに違う熱処理の優劣がそのままそのパソコンの性能に直結する。
アクティブヒートシンクも存在しない極端に薄いノートパソコンと、厚みに余裕があって排熱機能が充実したノートパソコンを比較すれば、同じ型番のRaven Ridegeを使っていても後者の方が誤差とはいえない差で高性能である事も起こり得る。

その代わりに、性能に拘らなければTDP15Wの省電力を生かした製品を作る事が可能というわけだ。
これは実際に製品を開発するメーカーにとっては大きなメリットといえないこともないが、消費者にとっては誤解を生みやすい要素かもしれない。

「同じCPUなのに、どうして自分のパソコンは性能が低いんだ!?」

という感じで。
まあこういう傾向は10年以上前のノートパソコンでも起こってはいた(一定の温度を超えると動作周波数が落ちる)が、制御が緻密になった分通常の使用状況での性能に違いが出るようになったと思えばいい。


というわけで、後半は話がCPU全般の省電力機能の話になってしまったが。

製造に使われる14LPP自体が元々省電力向けプロセスという事もあり、モバイル向けに調整しても意外と高性能だったRaven Ridge。

Intelのように全ての市場へ一斉に出荷が出来ないAMDの内情を考えると、自作市場への供給が後回しになるのは当然とも言える。だが供給量さえ増えれば自作市場にも出荷が始まるはずなので、出来るだけ早く増産体制が整うことを祈る。



参考にした記事:

ZEN+Vegaとなった「Ryzen Mobile」ファミリの詳細
https://pc.watch.impress.co.jp/docs/column/kaigai/1087925.html

AMD,ノートPC向けの新世代APU「Ryzen Processor with Radeon Vega Graphics」発表。
http://www.4gamer.net/games/300/G030061/20171025016/

Ryzen MobileはTDP 15Wの投入を最優先
http://ascii.jp/elem/000/001/577/1577984/



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