SSブログ

Cortex-A72について考える [CPU]

英ARM社の新しいCPU、Cortex-A72が今話題だ。

Cortex-A72はハイエンドCPUで、恐らくTSMCの16nmプロセスでの製造を前提としたCPUコア。
実際の製品としてはグラフィックスコアや各IOといった周辺回路も全てパッケージされたSOCとして製造され、主にハイエンドスマートフォンなどに搭載されると思われる。

このA72はハイエンドという事もあり、現行のハイエンドプロセッサCortex-A15の3.5倍の性能を持つという。その分消費電力も多く、big.LITTLEという2種類のCPUコアの切り替えで消費電力の削減を図っている。

さて、実際どの程度省電力なのかという目安についてはARM側にいくつか主張がある。
これもA15との比較だが、同じ負荷の処理をさせた場合は75%の消費電力。big.LITTLEを活用した場合には40~60%の削減が見込めるらしい。
ちなみにbig.LITTLEの“big”はいうまでもなくCortex-A72の事だが、“LITTLE”側のコアはCortex-A53を使っているという。

まあいずれにしても、big.LITTLEという構成は苦し紛れの逃げ道でしかない。
現実問題としてスマートフォンなどの製品に搭載されたとき、想定されたような働きが出来るかといえば疑問がある。


さて、主な特徴として注目されている事を少し書いておこう。

CPUコア本体については、64bit命令に対応した事とメインメモリーが4GB以上に対応した事が大きなニュースだ。
特にメモリーに関しては今まで最大2GBというのが主流であったから、今後はより大きなメモリー空間を必要とするアプリケーションソフトウエアの開発が可能になる。ただし携帯情報端末の性格を考えると、メモリーを2GB以上に増やす意味がどれほどあるのか疑問だ。
特に画面サイズが小さく扱える情報量の少ないスマートフォンの場合、単にバッテリー消費を増大させる原因になるだけという可能性がある。

64bit対応にしても同様でほとんど意味が無いように思う。
スマートフォンで64bitアプリが威力を発揮するというイメージが、私にはどうしても湧かないのだ。
64bit対応CPUが普及を始めてから10年経つデスクトップパソコンですら、64bitアプリの普及はあまり進んでいない。その事を考えると少なくとも10年以上、ARM SOCで動作する64bitアプリは実験的に作成されるもの以外存在しない状況が続き、ほとんど全てが32bitのままという事になると思う。


最後はグラフィックスコアについて。

他のARM系SOC同様、Cortex-A72もグラフィックスコアをSOCに含むが、Cortex-A72と同時に発表されたグラフィックスコアとして“Mali-T860”が注目されている。
Mali系のグラフィックスコアはARM純正として多くのSOCで採用されているが、あまり性能的に芳しくないというのが私の率直な感想である。
今回のMali-T860もハイエンドというには少々力不足に感じる内容だが、スペック的には一応ハイエンドの範疇に入る。
しかしそれでも、性能的にはnVidiaのGPUやPowerVR系のコアに一日の長があると思われる。


というわけで。
鳴り物入りで登場したCortex-A72であるが。
あくまでもハイエンド、あくまでもフラグシップというだけの存在かな、と。
ただまあ、Android OS自体の変化の方向性がリッチな方向に向いている以上、今現在の普及品クラスの性能ではいずれ不足する可能性は否定できない。
そうなればCortex-A72の持つパフォーマンスが燦然と光り輝く事になるのだろう。

Cortex-A72を搭載する製品の登場は来年以降らしいが。
とりあえず最高のものが欲しい、実際にそれがなんの意味もなくても自慢できればオッケー!という人は、今から楽しみに待つといい。
そのような価値観であれば期待は裏切られないと思う。
nice!(1)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:パソコン・インターネット

nice! 1

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0