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AMDのデスクトップ向けAPU (Kaveri) が残念すぎる [CPU]

今年に入ってAMDの新しいAPUに関するニュースが増えているが、Bulldozer系のコアを発展させたコアはどうやら来年まで使われるようだ。

正直この話にはガッカリである。
何故ならBulldozer系コアは理想ばかり高くて現実には理想の“り”の字程度しか実現できていない失敗作だから。


Bulldozer系コアの特徴は1モジュールという単位に64bit整数演算コア2個+128bit浮動小数点演算コア1個という構成でデュアルコアとし、主にサーバー向けの調整をされたコアである。
なぜこのような変則的デュアルコアにしたのかというと、サーバーでは整数演算の処理能力が重要なので、このような構成にする事により回路面積の大きな浮動小数点演算コアを削減出来、マルチコア化によるシリコンダイの面積を削減する事が可能になるからだ。
大雑把にいうと通常の整数コアと浮動少数コアが1:1のCPUコアを10個搭載可能な面積に、Bulldozer系コアなら整数コアを16コア(つまり8モジュール)搭載可能で、その方が性能が高い、という理屈。

また1クロック当たりの命令処理効率を落としてでも動作周波数を上げようという試みも成されたが、これはかつてIntelがPentium4で失敗した手法。でも当時のAMDで指揮を取っていた人達は、私から見たら暴挙としか思えない決断を下したのだった。

他にも色々革新的アイデアが盛り込まれて実際に登場した初代Bulldozerは「サーバー用としてはそれなりに速かった」。しかし誤算は動作周波数が上げやすくなった代わりに消費電力の上昇が想定以上に酷かった事だ。動作周波数を下げればかなり省電力にはなったものの、そうすると今度はクロック当たりの処理が遅いデメリットがボディブローのように効いてくる。
こうしてAMDはそれまでにIntelから奪っていたサーバー向けCPUのシェアを一気に失った。

しかしそんな事よりも我々消費者にとって不幸だったのは、このようなあまりにも一般向けとはいえない性能バランスのCPUコアがそのままパソコン用CPUとして流用された事だ。
サーバーと違い一般のパソコンは様々な目的のために様々なソフトウエアを走らせる。特にゲームやマルチメディア関係のプログラムは浮動小数点演算を多用するから、デュアルコアでも1つしかない浮動少数演算コアが足を引っ張る事(性能がいまいちなのは単にコア数の問題では無いのだが)になった。Intel製CPUに勝る点は※デスクトップでの操作に対する体感レスポンスが速いくらいで、処理性能と省電力を比べたら性能的にほとんど劣るという体たらくだった。
※元がサーバー用だけあって並列して動作するスレッドが多い場面でのレスポンスは良かった

その後初代APUのK10系コアに代わり2代目でBulldozer系が採用された事で、CPUに対する評価がグラフィック処理も関わるようになるとCPUとしての価値をある程度取り戻す事に成功したが。
この2代目APUであるTrinityが出た時はクロックが高いくせに初代のLlanoよりベンチマークが遅いと言われたものだった。


というわけで前置きが長くなったが、来年登場予定の“Bristol Ridge”である。
CPUコアはBulldozer系の“Excavator”である。
最大コア数は2モジュールで4コア、これはAPUに初めてBulldozer系コアが使われたTrinityから現行のKaveriまで共通。
グラフィックコアはKaveriから小改良されただけに留まる模様。

そして製造プロセスはなんと28nmと変わらず。
一応プロセスの改良は続けられているから単純に同じとは言えないが、最上位のモデルでTDP95Wという設定が消費電力の多さを物語っている。

あれ?2016年は新しいx86アーキテクチャー“Zen”を使ったコアの“Summit Ridge”を14nmで出すんじゃなかったの?という疑問が一瞬浮かぶが、登場予定である2016年の第3四半期は“Summit Ridge”と一緒に“Bristol Ridge”も出す模様。


う~ん。

今年の新しいデスクトップ向けもCarrizoがキャンセルされて“Kaveri Refresh”なんていうのでお茶を濁されるし。

今使っているLlano(A8-3870K)が不満というわけではないが、それでもIntelが順調に改良を進めているのに対し、AMDのAPUの、ここまで変化が少ない事が残念すぎる。

IntelのCPU自体は嫌いではないが、AMDの尖った性能が昔から好きな私にはAMDにもっと頑張って欲しいと思う。
特にAMDの業績を悪化させた張本人たるBulldozer系コアには、早く引退してもらいたいものである。
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コメント 4

通りすがり

Bulldozerアーキテクチャの詳細が発表された2011年当時私も非常に落胆したのを覚えています。
整数演算性能の向上こそ一般のPC利用者が一番求めているものであり、やはりそこが製品の評価に繋がっているのをintelのcoreMA系が実証し続けていた最中、その肝心要の整数演算のIPCを落とす方向に舵を切ったのは素人目から見ても正気の沙汰ではないと感じさせるのに十分でした。
しかも高クロック化による電力効率悪化のおまけつきで、これではNetBurstの再来ではないか、と。
事実そういった風になってしまったので残念至極です。
Zenでこの点の改善が見込めないようなら、CPU部門におけるAMDのプレゼンスは実質的に消滅してしまうのでは、とも思っています。
by 通りすがり (2015-03-15 14:01) 

98式軍刀

>通りすがり様

Zenはどうなるのでしょうねぇ。
まだ1年半以上先の話で、出ている情報も少ないので想像もつきませんが。

でも、ZenがコケてもAMDのプレゼンスが実質的に消滅してしまうという事はあり得ない話です。
何故なら、モバイル向けのコアがかなり頑張っているので。

PS4やXBOXに採用された事も大きいですし、安泰という事はないでしょうがまだまだイケると思います。
by 98式軍刀 (2015-03-17 18:22) 

NO NAME

もし、Zenも自動設計ツールで作ってたら...
いや、AMDを信じよう!!

by NO NAME (2015-12-01 10:01) 

98式軍刀

>NO NAME様

Zenに限らず、今時のCPUは回路規模が大きすぎるので自動設計ツールを使わなければ設計が出来ないと思われます。
Bulldzerがそれで失敗したのは、全てを自動設計に頼っていたところです。

うろ覚えですが、Zenの設計は重要な部分については人手で行われているそうです。
by 98式軍刀 (2015-12-01 18:00) 

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