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14nmなCPUのお話 [CPU]

最近CPUに関する話題がネット上に多いので今回のネタにする事にした。
話題の中心はIntelの14nmプロセスで作られるBroadwellというコードネームのCPU。
とはいっても私が興味あるのはなんて型番のCPUがどんな性能でクロックがいくつか、というようなベンチマーカーな話ではなくチップの中身のお話。
当然先日正式発表されたHaswell-Eはスルー。どんな物かは把握出来ているし、それ以上の興味はないので。

ちなみに、一応スマホ用のARM系もHOTなのだが、こっちは話としては全然オモシロくない。
nvidiaがTegra3の失敗に懲りずまた何かやっているが、これも失敗するのではなかろうか?と感じる無茶なモノを作ろうとしているとしか思えないのでパス。
何より業界では高性能製品よりも低コスト製品の話題の方が熱いという現実。
実際のところ、スマホは機能的に成熟したのでCPUの性能はこれ以上必要ない。だからより省電力化したいが、元々1~2Wしかない消費電力を削るのは容易ではない。ならば機能を多少削ってでもダイ面積を削減し、省電力化と低コスト化を進めるというのが主流になるのも仕方が無い事だと思う。


話を元に戻そう。
Intelは今年中に新しい14nmプロセスを使ったCPUを登場させる。CPU自体は2014年8月現在もう生産されていて、今年秋以降発売のノートPCに搭載されるらしい。
中身は2011年に登場したSandyBridgeの正常進化版で、目立って大きな変化は無いように見える。が、もはや成熟しきったコアを毎年数%と小幅ながら、膨大な数の改良によって性能を伸ばして来た事実は驚愕に値する。
まあ、単に使うだけの人にとっては空気みたいな改良であるが。

そしてCPUコアと共に搭載されるGPUコアはトランジスタ量を大幅に増量。現行のHaswellはすでにライバルであるAMDのAPUにかなり迫るGPU性能を叩き出せるようになって来たが、Broadwellでは完全に追いつくと思われる。

とまあここまでは誰でも知っていそうな話。
私が注目するのは、このように高性能化を進めながらも大幅な省電力化を達成しているという所だ。
なんだ、省電力化かあ、と思われる人は多いと思うが、技術的にはかなり凄いことをやっている。


省電力化の鍵はFIVR(Fully Integrated Voltage Regulator)と14nmプロセスにある。
FIVRは大雑把に言うとCPU自体に電源を載せてしまう技術。CPUコアの供給電圧を外部で決められた電圧に依存する場合、CPU内ではその電圧で全ての回路が動作するが、CPU内部に各区画ごとの電源を載せれば、区画ごとの最適な電圧を細かく供給する事が出来るというワケ。
このFIVR自体はHaswellですでに採用されている技術だが、思うに22nmなHaswellでの搭載は練習で、14nmで生産するCPUからが本番な気がする。

しかし、あの小さくて薄いCPUのチップに電源回路を作るというのが私には想像できない。
必要なのはトランジスタとコンデンサとインダクタ(コイル)だが、トランジスタとコンデンサはともかくインダクタはどうやって作るのか。
まあ、出来たからFIVRなどというシロモノが実用化されているわけだが。

2014/09/03追記。
電源回路はCPUのシリコンダイではなく、パッケージ側(CPUのチップが載っているプラスチックの板)に作成されている模様。イラストもそのようになっている。さすがにCMOSプロセスでやるのは無理というか無駄というか、まあそうなんだろうなあ。

FIVR.jpg
無断引用しているFIVRの構造を示すイラスト。よくわからんがこんな感じらしい。


そして14nmプロセス。
Intelは22nmから3Dトランジスタという構造を採用しているが、当然14nmでも3Dトランジスタを使っている。
3Dトランジスタというのは3D NANDと考え方が似ていて、乱暴な表現をすれば半導体の接触面積を増やす事で高性能化を図ろうというモノ。そして同時に、板を地面に寝かすよりも立てる方が地面との接触面積が少ないという考え方で、トランジスタが地面=シリコン基板との接触面積が少ない=リーク電流が少ないという事で消費電力も減る。

2D3D-TR.png

あれ?FIVRも3Dトランジスタも前から使っている技術?
はい、その通り。しかし改良して性能が飛躍的に上がった結果、「同じ性能ならば前世代の半分」にまで消費電力を減らすことに成功しているというIntelの主張なのだ。別の見方をすると、同じ3Dトランジスタを採用した22nmプロセスと比べてもかなり出来が良いのが今回の14nmプロセス。ただでさえ周回遅れのTSMCやグローバルファウンダリーズで作られるCPUは到底追く事が出来ない領域に入ったかもしれない。

それにしても、消費電力が従来の半分というのは普通ならちょっとありえない話だ。
そしてさらにIntelはこの高性能かつ省電力なパソコン用CPUを、いずれはスマホに持ち込もうとしている。
ARM系の高性能化と省電力化の矛盾に苦しむ様子を見ると不可能に思えるが、今回のBroadwellの進化を見ているとそれもあながち不可能とは言えないと思えるから不思議である。

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