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劣化するUSBメモリー [ハードウェア]

かつてはフロッピーディスクが担っていた取外し可能な記憶媒体。
その後MO(光磁気ディスク)やZipドライブになり、現在はUSBメモリーに置き換えられた。

というわけで空前の普及を見せるUSBメモリーだが、使っている人のほとんどはUSBメモリーが「一体何なのか」を知らない。そのおかげでトラブルも少なくないので、今回はUSBメモリーの話を書こうと思う。


最初に結論を書くと、「USBメモリーは、データがいつか突然消える事を前提に常にバックアップをする。そしてエラーが確認されたらエラーの修復は絶対にしないで、その時点で読めるデータをハードディスクなどにコピーして、壊れかけたUSBメモリーは廃棄する」。

買い替えはハードに使い倒す人はそれに応じて1年毎など短く、あまり使わない人は5年~使っても問題ないかもしれないが、長い期間使っていないと勝手にデータが消えるので大事なデータは入れっぱなしにしない事。

またUSBメモリー上のデータを直接編集するような事は寿命を著しく損なうため、一旦パソコンにコピーして編集後に書き戻す事が最善である。どうしても直接編集が必要な場合は出来るだけ短い間隔で定期的に買い替える。

最後に空き容量に余裕を持って使うと寿命が長くなるので、サイフが許す限り大容量の物を買うと幸せになれるかもしれない。


以下、素人向けの難しいお話。


まず最も基礎的な知識として、「USBメモリーの中身は何なのか」。
一般にはただ「USB」という物としてか認識されていないが、当然中身あってこそ記録媒体として使えるのだ。その中身とは「フラッシュメモリー」と「コントローラーチップ」である(フラッシュメモリーにも種類があり、ここで言うものは「nand Flash」という種類に限定している)。

フラッシュメモリーというと、デジタルカメラを使う人の一部は「コンパクトフラッシュ」という記録媒体で聞き覚えがある人もいるかもしれない。そう、中身は同じなのだ。他にはパソコンで最近普及が広がるSSDもそうだし、フラッシュメモリーが最も普及する分野ではスマホの「容量32GB」とかいうのもフラッシュメモリーの事だし、SDカードやメモリースティックも中身はフラッシュメモリーである。


そこで、ではフラッシュメモリーとはなんだ?となる。
大雑把に言うとその正体は電子を蓄えたり放出する事でデータを記憶する電子部品だ。特徴はとても安く作れるという事。だから今これだけ普及しているのだが、安い代わりに大きな欠点がいくつか存在する。その欠点がUSBメモリーを使うに当たりトラブルの元となる原因の一つになっている。

NAND説明.png

欠点の中でも致命的なのはセル単位の書き換え回数の制限だ。その回数はかつて1万回と言われたが現在では1000回程度しか保証されておらず、実際には0~数千回というかなりバラバラな状況。従ってなんの対策もせずに使うとあっという間に寿命が来て正常に読み書き出来なくなってしまう。また一部が壊れただけで他の部分が使えるなら継続使用も可能だが、一定以上の範囲で寿命を迎えると全体が読み書きできなくなる。

また読み書きの速度が遅く、特に書く場合には読む場合の数倍時間がかかる。データの保持期間が短いという欠点もあり、しかもそれは書き込み回数が増えるに従ってどんどん短くなる。かつては10年と言われた保持期間も今では5年以下が普通だ。新品で10年OKでも、ある程度使い込むと数年あるいは数ヶ月でデータが消える。
他にも静電気に弱いとかもあるがここでは省く。


こうしたフラッシュメモリーの弱点を補う役割を担うのがコントローラーチップ。フラッシュメモリーはそのままだと使えないので、まず読み書きに必要な命令を処理するためのコントローラーが必要なのだが、その中に弱点を補う機能も含まれる。機能の一つはウェアレベリングといい、フラッシュメモリーの特定箇所に読み書きが集中しないように平均的に消耗するよう、書込み位置をバラけさせる機能を持つ。二つ目は読み書きの遅さを補うために2つ以上のチップに並列して読み書きしたり、一旦フラッシュメモリーよりも高速なメモリーにデータを蓄えて使う側からはデータのやりとりが終わったように見せかけて高速化を図る機能だ。そして最後に、これが一番重要なのだが、壊れて当たり前のフラッシュメモリーのデータが安全に読み書き出来るよう、ある程度壊れてもそのデータを計算で元に戻す機能(誤り訂正という)も付加されている。
保持期間対策では書き込み動作でブロック消去やウェアレベリングに伴うデータの配置換えが起きるので、普通に使っていれば問題にならないようだ。


ところでUSBメモリーに話を戻すと、USBメモリーは非常に安い。容量が少なければ千円以下で買えてしまう。こんなに安いのだから、中身のフラッシュメモリーもコントローラーチップも当然安物が使われているわけだ。パソコンに使うSSDやスマホに使う物は出来るだけデータが消えたりしないよう厳重な部品選別と寿命を延ばす工夫が凝らされた高級なコントローラーが使われているが、USBメモリーの場合はその限りではない。とにかく安く使いやすくが重要なので、特に安物USBメモリーはフラッシュメモリーがヘタをすればスマホに使えない選別落ちを使い、コントローラーも必要最低限の機能しか無い安いチップを使う。それでも日常でちょっとデータを持ち運ぶだけなら十分実用になるからだ。


以上の理由で、USBメモリーはある日突然中のデータが全て消えるという事態になりやすい。もし一部のファイルが正常に読めなかったりあるいは消えたり、あるいは読み書きに今までより時間がかかりすぎる場合は寿命が来る前兆なので、すぐにデータを別の場所にコピーすべきだ。
その際重要なのは、パソコンでエラーチェックや修復を絶対にしない事。そこで書き込み動作が起きればそれだけデータの破壊が進むからだ。


おわり。

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