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Pinnacle RidgeとはどんなCPUなのか [ハードウェア]

昨日4月19日午後10時に、日本国内での販売が解禁された“RYZEN 2000番台”こと“Pinnacle Ridge”。

製造プロセスが12LPに変わったものの、マイクロアーキテクチャ(CPUの設計図)の改良は無し、しかも基本動作周波数もほとんど同じと、1世代前のRYZEN 1000番台“Summit Ridge”と比較して一体何が違うのかよくわからないスペックだったのだが、各情報サイトのテスト記事を読むと意外にも性能差は大きかった。


まあベンチマークの結果などは専門のトコにおまかせして、ここではネット上に出回っている記事から拾い集めた情報を元に、何が変わったのかわかりやすくまとめてみる。

“Pinnacle Ridge”は“Summit Ridge”から多くの変更点があるが、性能に関わる重要な変更点のみを書くと


・製造プロセスが14LPPから12LPへ変更された(※重要:ダイサイズは同一)

・L1~L3まで全てのキャッシュ階層でアクセスレイテンシ(遅延)を低減(IPC向上)

・CPUの動的動作周波数制御や省電力制御を変更(一時的な動作周波数の最大値向上)


これらの改良によって実際の利用状況でどのような変化があったのか。それは以下の通り。


・前世代と比べ、平均して10%前後の性能向上

・キャッシュレイテンシの改善でIPCは競合のIntel製CPUに“ほぼ”追いついた

・消費電力が高負荷時で大幅上昇、低中負荷時は小幅上昇又は微減(条件により違う)


以上。

なお、“Pinnacle Ridge”はメインメモリの対応リストにDDR4-2933が追加されているが、AMDの説明ではメモリコントローラは一切手を入れていないらしい。これは12LP採用にともなって配線層に手が入った結果、信号の伝送マージンが増えたのではないかという仮説がある。だとしたら、より高クロックのメモリを利用できるようになる理由にはなる。

このメインメモリ周りについては書き始めると長くなるので、別に記事を書こうと思う。


他に変わった事といえば、性能と関係はないが販売価格が大幅に下がった。

初値の比較では2700Xが41000円前後と、64000円前後だった1800Xと比較して2万円以上安い。2600Xも1600Xの初値が33500円程度だったのが28100円前後と5000円以上安くなっていて、コストパフォーマンスは前世代と比べてかなり向上した。

しかも前世代は上位機種の一部でCPUクーラーが付属しなかったが、“Pinnacle Ridge”は全ての機種で付属する。
特に最上位の RYZEN7 2700Xには現在約8000円で単体販売されているWraith MAXの改良版である“Wraith Prism”(市場価値は60ドルらしい)が付属する事から、かなりお買い得感が増している。

ちなみに“Pinnacle Ridge”の販売開始に伴って、モデルナンバーは大きく整理された。“Pinnacle Ridge”が4種類しか無い事と、ハイエンドが2800ではなく2700である事もこれに関係し、「RYZEN7 2800Xが出る可能性は今の所無い」とAMDも明言している。



次は平均で1割にも及ぶ性能向上の理由について。

AMDの説明によると、IPCはキャッシュのレイテンシ改善で3%程度上がったという。

そしてターボコアやXFRによる最大動作周波数の向上に加え、さらにCPUの動的動作周波数制御の大きな変更により、前世代はXFRによるオーバークロックはCCX内で1コアのみの制限だったものが、その制限がなくなって全てのコアがXFRによるオーバークロック動作をするようになった。(ただしXFRはCPUの冷却が十分でないと効果を発揮できない)

キャッシュのレイテンシ改善と一時的な最大動作周波数の向上に加えXFRが全コア適用、この三つの要因によって、基本設計の変更を一切せずとも1割前後の性能向上が達成されたという事だが、おかげで非常に低いコストで1割の性能向上をもたらした事と引き換えに消費電力の増加を招いている。

これは12LPの採用で生まれるメリットを主に性能向上へ振り向けた事が理由で、通常は製造プロセスを微細化(或いは改良)すると消費電力の削減が見込めるのだが、AMDがCPU製造に利用している12LPの場合は諸事情でトランジスタの性能が14LPPと大差ないためにこのような結果になった模様。

要は若干のIPC向上とオーバークロック耐性が少し上がった(最大で4Ghz→4.35Ghz)だけ、というのが“Pinnacle Ridge”の正体であるようだ。



そんなわけで、今回AMDより新しく出た“Pinnacle Ridge”。

コストパフォーマンスは相変わらずIntelのそれを大きく上回り、実性能でも8コアと6コアの比較であるが最上位機種同士の比較でIntel製CPUに対しほぼ勝利を収め、これから新しくパソコンを組み立てる人にとっては非常に魅力的なCPUに仕上がっている。

一方で高負荷時の消費電力上昇はかなりのもので、少々扱いにくくなった。パソコンのケースが小さかったり、使用環境があまり冷却に向かない場合には注意が必要。

消費電力や熱の問題が気になる場合、絶対性能に拘らなければより安価で消費電力の低い前世代の“Summit Ridge”を選ぶのもアリだと思う。(流通在庫が残っている間しか買えないが。)

まあ、消費電力よりも性能だ!という人は迷わず“Pinnacle Ridge”。

長い物に巻かれると安心する人はIntelを買えばいいだろう。



参考記事:

AMDが12nmプロセスの第2世代Ryzenファミリを正式発表
https://pc.watch.impress.co.jp/docs/column/kaigai/1118117.html

“Pinnacle Ridge”こと第2世代Ryzenで、CPUパワー競争はさらに過熱する
http://ascii.jp/elem/000/001/666/1666508/

Ryzen 7 2700X/Ryzen 5 2600Xレビュー
https://news.mynavi.jp/article/20180419-618959/

クロック向上で注目される第2世代Ryzenをベンチマーク
https://pc.watch.impress.co.jp/docs/topic/review/1117989.html

Ryzen 7 2700Xを速攻OCレビュー! 競合比較で見えてくる新Ryzenのポテンシャル
http://ascii.jp/elem/000/001/665/1665993/

Ryzen 7 2700X,Ryzen 5 2600Xレビュー。
http://www.4gamer.net/games/300/G030061/20180419012/

Ryzen 7 2700X など第2世代 Ryzen ベンチマーク比較レビュー
https://www.pc-koubou.jp/magazine/2860




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