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最近のAMDについて色々と [CPU]


今年4月末から、自作市場向けのRyzen 5000シリーズリテールパッケージの在庫が潤沢となった。

あれから一か月経つが、その状況に変わりは無い。

発売から半年近く、流通量が極めて少数で販売店の在庫も枯渇が続いていたのに、何故突然こうなったのか。

色々と想像は出来るが、本当の所はわからない。


なんにせよそのおかげで振り回されたのは、自作市場でRyzenのハイエンドCPUを求める消費者達だ。

私個人としては、こんな事態になるのであれば発売日をRocket Lakeと同じ今年3月にすれば良かったと思う。

ちなみに、せっかく在庫が潤沢になったにもかかわらず、Ryzen 5000シリーズの売れ行きはそれほど良くないように見える。

なにしろRyzen 3000シリーズと違ってもう値下がりが始まっているのだ。(5950Xだけはわずかに値上がりしているが、一部でポイントによる実質的な大幅値引きが始まっている)

・・・まあ、AMDに対するイメージが地に落ちたという事で、この件はこれ以上言うまい。
(知人に頼まれていたノートパソコンの調達も、AMDではなくIntelの物を選ぶ事に決めた。)


さて、次は技術的なお話し。

今日見つけたネット上での記事で、AMDの「3D Chiplet Technology」に関するものがある。

これはすでに「Lakefield」として製品化され市場に出ているIntelの「Foveros」と同様の考え方で、CPUやSoCに使われるダイをRyzenのように平面に並べるのではなく“上に積み重ねる”という技術であり、これからの主流になると思われる技術だ。

この技術が採用される背景には、今後製造プロセスの微細化が物理的に不可能になる事でトランジスタの密度を上げられなくなり、これ以上高性能化を進めるとCPUのダイが肥大化する事が避けられない、という事情がある。

ダイの肥大化は製造コストを上げる事になるが、ダイを機能ごとに分割して製造する事でコスト削減が可能だ。

AMDのRyzenに採用されているチップレット戦略というものは製造プロセスの微細化よりも回路規模の拡大が進んでしまったために採用されたが、平面に並べる事でダイ同士を接続する配線が長くなって信号の伝達に遅延が生じ、それが性能向上の足を引っ張るという問題を生んでいる。

だが、ダイを上に積み重ねる事が出来れば、ダイの肥大化と配線長の問題双方を解決出来るというワケだ。


AMDの場合、今年中に出るかもしれないZen3コアの新しいCPUに採用する見込みで、CPUコアの上に積み重ねるのはL3キャッシュのSRAMになる。

これは極めて無難な選択で、複雑な論理回路は熱で容易に動作不良を起こすが、回路の単純なSRAMであれば設計と製造の工夫でそれをある程度防ぐ事が可能だ。

Intelの「Lakefield」はAMDのそれとまったく違って、下に各種のIO機能を持つダイを置いて、上にCPUコアとGPU、メモリコントローラが置かれている。

このため、ハイパワーなCPUに使うと温度上昇でIO関係の動作が怪しくなる恐れがあると私は思うが、「Lakefield」は最初から省電力なモバイル向けCPUとして開発されており、QualcomのSocに対抗する製品という位置付けになっているため、そのような心配事はまったく無い。

このように同じ3Dパッケージ技術であっても、アプローチがまったく異なるのが興味深い。


なお、SRAMを積層して従来の3倍のL3を持つ新しいRyzenは、ゲームなどで既存のRyzenよりも15%ほど高い性能を見せるという事だ。(とはいえ、製造プロセスの改良が無ければ最大動作周波数は若干下がると予想する)

単純にL3が3倍に増えたからと言って全ての用途で15%も性能が上がるとは思えないが、複雑な計算が必要なゲームであればこのような結果になってもおかしくはない。

そういう意味では用途を選ぶCPUになりそうだが、問題は値段である。

この3D積層技術はまだ黎明期という事もあるので、当分は高付加価値の要求される製品にのみ採用されるのかもしれない。



AMD RyzenがIntelより優位な理由。プロセッサの競争軸を変えていく「3Dパッケージング技術」とは?
https://pc.watch.impress.co.jp/docs/column/ubiq/1328626.html

AMD、高速L3キャッシュでゲーム性能を15%向上させる3D積層技術
https://pc.watch.impress.co.jp/docs/news/event/1328426.html

AMDの「3D V-Cache」とは何か? TSMCのSoIC技術から正体を考察する
https://news.mynavi.jp/article/20210602-1898128/



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