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Zen2コアのAPU“Renoir”について [CPU]


数日前の事だが、AMDよりZen2コアのAPU“Renoir”が正式に発表され、その概要が明らかになった。

AMD、“Renoir”ことZen 2ベースAPU「Ryzen Mobile 4000シリーズ」の概要を明らかに
https://pc.watch.impress.co.jp/docs/column/kaigai/1241266.html

以前私は、APUは12nmのまま、という一つの予想を持っていたが、7nmで製造されるという予想は出来なかった。

その理由はダイ面積。

Zen2のCPUであるRyzenシリーズの“Matisse”、そしてサーバー用CPUであるEPYC“Rome”は、歩留まりと生産数を向上させる事で生産コストを下げるためにCPUコアとIOを分離した。

この“チップレット”と呼ばれるCPUコアのダイサイズは約80m㎡で、IOチップレットのダイサイズは約130m㎡(Ryzenの場合)。

ウエハ上の欠陥が同じ量でも、ダイサイズが大きいと不良となるダイが多く出るが、ダイが小さければ良品のダイがより多く採れるからだ。

budomari.png
図は私が過去にダイサイズと歩留まりの関連性について書いた記事より


特にIOをGFの14nmで別ダイとした理由は、14nmから7nmにした所でIOの占める面積はあまり減らないという理由からだった。

なので、APUでも同じ考えを基にモノリシック(一つのダイで製造)ならば12nm、7nmならばチップレットだがコストの問題でこれは無理だろうと、私はそう考えたのだ。

ところがAMDは7nmでモノリシックとして来た。

何故それが可能になったかを考えたが、考えるまでもなく以下の二つが理由だと即座に結論した。


・TSMCの7N(ArF液浸露光7nmプロセス)が1年以上の改良によって歩留まりが向上した事

・APUとして必要なGPUコアとIOを入れても面積が許容出来る大きさに収まる事


前者は容易に想像出来る事だ。初めにZen2のダイを生産した時と今では当然に改良されていなければおかしい。

だが後者は想像出来なかった。

現在市販されているAPU“Picasso”はダイ面積が210m㎡もあるのだ。これが仮に2/3の大きさになったとしても140m㎡。Zen2コアの約80m㎡の倍近いわけで、この大きさが許容出来るとは思えなかったのだ。

しかし実際にAMDが出して来た“Renoir”は156m㎡。

これでも十分な歩留まりになるほど、現在のTSMC 7Nプロセスは改良が進んだというわけだ。

Renoir_die.jpg
TechPowerUpの記事より画像を拝借。“Renoir”のIO関連の面積は、ダイ面積の約半分を占める。
32nm時代の初代APU“Llanoでは多目に見積もっても2割程度しかない事を考えると、
USBやSATA等、機能が大幅に増えた事を割り引いてもIOの縮小が難しい事がわかる。


さて、製造に関する話はここまで。

次は性能に関わる部分について思った事を書く。

意外だったのがCPUのコア数。4コアのままかと思っていたら、まさかの8コア。

L3キャッシュは1/4の4MBに減らされているが、L3の削減による計算能力低下は最小限に抑えているだろうから性能は期待出来る。

動作周波数に関してもデスクトップ向けのRyzenと同様に向上しているが、それよりもIPCの向上による性能向上の方が割合としては大きい。

また、GPU部分も“Picasso”と比較して改良が進んでいて、GPUコアはこれまでと同じVEGAでCUが3つも減った代わりに動作周波数が25%向上。

これだけならばCU削減の影響が大きく性能低下を想像させるが、コア自体が改良されているため1.79TFLOPSというカタログスペックであり、これはRyzen 5 3400Gの1.76TFLOPSをわずかに上回る。

さらにメモリコントローラ周辺の改良でメモリ帯域が上がっているそうなので、アプリケーションを実行した際の性能はさらに上がる可能性も残されている。


総合的に見ると、前世代から大幅な性能向上を果たしながら電力消費の効率も上がっていて、少なくとも現在のIntel製システムに対して大幅に競争力が増した事がわかる。

ただし。

今後出る予定のIce lakeやComet Lakeと比べると見劣りする部分もある。

実際のところは全て出揃ってから同一条件で比較しないとわからないが、様々な面でデスクトップ向け同様にモバイル向けでもまだまだIntelに一日の長がある事は間違いないため、AMDのさらなる高性能CPUの登場に期待したい。

そしてデスクトップ向けの“Renoir”も早く出てほしい!

AMDが拡張版K10コアベースのAPU「Llano」を初公開
https://pc.watch.impress.co.jp/docs/column/kaigai/401443.html



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