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トヨタ優勝おめでとう! Le Mans 24H 2019 [クルマ]

一昨日の日曜(2019/06/16)、日本時間午後10時に今年のル・マンは決勝のゴールを迎え、当然の結果としてトヨタのワンツーフィニッシュに終わった。

8号車が優勝、7号車が2位で、周回数は昨年より3周少ない385周だった。


私は衛星中継でリアルタイムにチェッカーフラッグを受ける優勝車・Toyota TS050 Hybrid 8号車がゴールする瞬間を見ていたが、やはりこの瞬間は良いものだ。色々と思う所はあれど、感動を禁じ得る事は出来なかった。

心から彼らと、彼らの戦いとその結果に対し、敬意と賞賛を送りたい。


ただし、昨年もそうだったが、この結果にはいささか疑問もある。

その疑問とは、トヨタにライバルと言える競争相手が存在しない事だ。

レースは結果が全て。とはいえ、世界でも長い歴史と伝統を誇る格式高い“Le Mans 24H”で優勝者として記録が残る事について、ライバル達との熾烈な競争の末に得た優勝との価値の差を考えると非常にがっかりしてしまうのだ。


こうした私の思う所についての根拠はこうだ。

まずここ5年間の優勝車の記録を比較するとこうなる。


開催年 優勝車 周回数 LMP1の参加台数
2015 Porsche 919 Hybrid 395周 13台(内トヨタ2台/Porsche 3台/Audi 3台)
2016 Porsche 919 Hybrid 384周 9台(内トヨタ2台/Porsche 2台/Audi 2台)
2017 Porsche 919 Hybrid 367周 6台(内トヨタ3台/Porsche 2台)
2018 Toyota TS050 Hybrid 388周 10台(内トヨタ2台)
2019 Toyota TS050 Hybrid 385周 8台(内トヨタ2台)

こうして並べてみると、2017年は3台エントリーしてかなり本気で勝ちに行ったトヨタに対し、2台に減ったポルシェと参加を見送ったアウディのやる気減退が対照的に見える。

この表から(もちろん予選と決勝の内容も考慮したうえで)読み取れる事は、2015年はポルシェとアウディが3台ずつエントリーするという2チームの激戦もあって周回数が伸びた一方、その後は様々な理由で周回数が落ち込み、2018年に至ってはトヨタのみワークス参加となって無理にスピードを上げる必要が無くなったトヨタは24時間で388周と2015年だったら表彰台にも上がれない余裕のペースで24時間を走り切り、さらに2019年は2018年よりもペースを落して3周少ない385周に留まっているという事。

耐久レースは綿密な計算の元に走行ペース(一周を何秒で走るか)とピット回数を決めて走るので、トラブルや他チームとの順位争い等でペース配分やピット回数(時間)などの変更が無い限り、結果は最初から計画された通りになる。

つまり、2019年のトヨタは計画的に遅く走る事で最大限にトラブルを回避し、確実に2台をワン・ツーフィニッシュさせる作戦を計画通りに完遂した事になる。

これは競争相手になる他チームが居ないからこそ出来る芸当と言える。何故なら、十分に競争力を持つ他チームが存在した場合、例え自分達のクルマが他よりも速く十分に信頼性が高いとしても、万が一を考えて必要なマージンを取る為にやはりギリギリの所で走らざるを得なくなるからだ。

またライバルが多ければ“首位争いとは別の所で、順位争いによりペースが落される”という事もある。
そのため、遅れを取り戻す為にペースアップが必要となり、その結果トラブル(クルマの故障や事故)に見舞われる例は非常に多い。
さらにチーム同士、そしてそれとは別にドライバー同士駆け引きなどもあって、不確定要素が激増するから尚更難しいレース展開を強いられる。(この事は終始1-2位を占め、他車との順位争いが発生しなかったトヨタにはまったく無縁の要素だったと言える。)

或いは1991年のマツダ 787Bのように、レース中盤以降作戦による追い上げでトップを走るメルセデスにプレッシャーを与えた結果、メルセデスは無理にペースを上げてクルマを壊し、優勝が確実と見られていたメルセデスを下したマツダの逆転優勝、というような逆転劇が起きる事もある。

このマツダ優勝の例にも見られるように競争力が一定の範囲にあるチーム同士の争いともなれば、クルマの性能を活かしてルーチンワークをこなせば自動的に優勝、などという事は有り得ない。


ちなみに2018年の1位トヨタと3位Rebellion Racingの周回差は12周、2019年は1位トヨタと3位SMP Racingの周回差は6周という結果からも、手の抜き様はかなり緻密に計算されている事を窺わせる。なにしろ昨年より3周分も遅く走っているにも関わらず、しかもレース中トップを走る7号車が2回も予定外のピットインで時間を浪費しているというのに、他チームに一度も抜かれる事無くワンツーフィニッシュなのだ。これで手抜きと言われない方がおかしい。

レギュレーションの変更(ハイブリッド車への各種規制)によって周回数に関する基準は変わるのだが、それ以上に参加車両の改良、そして競争相手が居ない事による無駄な加速の抑制とペース配分の最適化は24時間で可能な周回数を増やす結果に結びついてもおかしくはない。

こうした事を考え合わせると、2018年と2019年のトヨタはもっと速く走り、24時間で390周以上走れるだけの余力があったはずだ。
だが、トヨタは周回数を伸ばすどころか逆に落してきた。

当然これは不慮のトラブルを可能な限り排除するための対策でもあるだろうが、やはり何か釈然としないものが残る。


まあ、少なくとも今回の優勝という結果は本気で勝ちに行かねば到底成し得る事は出来ないし、勝つ為に24時間に渡って緻密に計算されたスケジュールをチーム一丸となって達成する事は相当なノウハウの積み重ねと労力が必要であり、歯車が一つ狂えば成しえない可能性を孕んでいる事を考えれば、誰にでも可能と言えるような生易しいものではけっして無い。

そういう意味では価値のある優勝、ル・マン2連覇ではあるのだが、だとしてもやはりこのレースを、そしてこのトヨタの優勝を、「微妙」と思わない人はどれだけ居るのだろうか。もうLMP2とGTEクラスのレースだけ見ていた方が遥かにおもしろかった位だ。

私はトヨタを尊敬するからこそ、こんなツマラナイレースをする位なら、トヨタは耐久レースの活動を休止してプライベーターに栄誉を譲れよ、と、本気で思っている。


2018年のル・マン24時間耐久レースに強い違和感
https://17inch.blog.so-net.ne.jp/2018-06-21

1991年のル・マン24時間レース
https://ja.wikipedia.org/wiki/1991%E5%B9%B4%E3%81%AE%E3%83%AB%E3%83%BB%E3%83%9E%E3%83%B324%E6%99%82%E9%96%93%E3%83%AC%E3%83%BC%E3%82%B9

2015年のル・マン24時間レース
https://ja.wikipedia.org/wiki/2015%E5%B9%B4%E3%81%AE%E3%83%AB%E3%83%BB%E3%83%9E%E3%83%B324%E6%99%82%E9%96%93%E3%83%AC%E3%83%BC%E3%82%B9

2016年のル・マン24時間レース
https://ja.wikipedia.org/wiki/2016%E5%B9%B4%E3%81%AE%E3%83%AB%E3%83%BB%E3%83%9E%E3%83%B324%E6%99%82%E9%96%93%E3%83%AC%E3%83%BC%E3%82%B9

2017 24 Hours of Le Mans
https://en.wikipedia.org/wiki/2017_24_Hours_of_Le_Mans

2018 24 Hours of Le Mans
https://en.wikipedia.org/wiki/2018_24_Hours_of_Le_Mans

2019 24 Hours of Le Mans
https://en.wikipedia.org/wiki/2019_24_Hours_of_Le_Mans

【ル・マン24時間 2019】日本時間22時スタート。1時間経過、
トヨタの2台は1-2フォーメーションでレースを支配
https://car.watch.impress.co.jp/docs/news/1190669.html


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