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QLCって本当に大丈夫なのか [ハードウェア]

QLCというカテゴリーのNAND Flashがある。

現在主流のTLCは一つのセルに8段階の電圧で3bitの情報を表現するが、これが16段階の4bitになったものがQLCだ。

WD、QLC 3D NANDで1.33Tbit実現のSSD向け96層チップをサンプル出荷
https://pc.watch.impress.co.jp/docs/news/1133921.html


記事によると、このQLC NANDがついにWestern Digital(東芝)から出る。

まずは一般消費者向けの製品として、後にサーバー用等業務用機器向けにも採用されるという。


このQLC、私は個人的には非常に警戒している。

理由は記憶媒体としての信頼性に疑問があるためだ。

もちろん商品として開発したものである以上、一定の信頼性確保に成功しているとは思う。
だが、NAND Flashの特性を考えればQLCなどありえない。

NAND Flashはセルと呼ばれる極小の蓄電池に電気を溜めて情報を保存する。SLCの場合電気があるかないかの二つの状態によって0と1を表す。この時、一定の閾値を超えた電圧であれば1、それ以下なら0というように判断するので、これがMLCの場合4段階になり、例えば0%~25%なら0、26%~50%で1、51%~75%なら3、76%~100%なら4というようになる。TLCやQLCはこれがさらに細分化されるわけだが、一つのものをより多くに分けると閾値の範囲が狭まってしまう。

もしNAND Flashのセルが、全て均一なもので蓄えられる電気が一定であり、かつ永遠に蓄電量が変化しないならば、TLCだろうとQLCだろうと技術的な難度は上がりこそすれ、他は何も問題はない。

だが現実にはセルごとの特性はバラつきがあり、使い続ければ蓄電量も落ちていく。

さらに一旦蓄電された電気は永遠に一定量を保ち続けるわけではなく時間と共に自然に減るし、減っていく速度、つまり保持期間もセルの状態によってバラバラで、さらにこれも使えば使うほど保持期間は短くなっていく。


こうした事を考えると、特にTLCとQLCは信頼性に疑問が残るというのは自明であろう。

そして信頼性と耐久性は、Bit数が一つ増えるたびに一桁単位で落ちていくと思えばいい。

SLCが1とすればMLCは0.1、TLCは0.01、QLCは0.001だ。つまりQLCはSLCの千分の一でしかない。
もちろん正確な数字はまったく違うが、これは書き換え回数を元に出した考え方なのでまったくのデタラメではない。例えばSLCは10万回、MLCは1万回、TLCは1000回という感じで書き換え可能な回数が減っている。


こうした問題に対し、NAND Flashを開発する会社は様々な対策をもって信頼性の確保を行っている。もしQLCが単純に現在主流のTLCの十分の一の信頼性しか無いなら、商品として成り立たなくなるからだ。
この対策に関しては大雑把に言うとNAND Flashのセル自体の信頼性向上と、情報の読み書き時に様々な処理を加える事で情報の信頼性を向上する方法の二通りある。

前者はセルの蓄電量を如何に一定以上の規準に保つか、材料と設計の両面からの対策をする。平面にセルを並べていた2Dから垂直方向にもセルを並べるようになった3D構造への転換は設計面からの対策で、面積当たりの記憶容量を増やす為に微細化が進み、セルの体積が減ったり隣り合わせのセルからの影響で信頼性確保が難しくなった事と、記憶容量を増やすための微細化が限界に達した事に対する対策を兼ねている。
また表記された記憶容量よりも多めにセルを搭載する事で冗長性(調子が悪い領域の代替のため)を持たせる事も行っている。

後者はハード・ソフト両面で符号計算するなどして、読み書きする情報が正確である事を担保する。これには余分な記憶容量が必要であるが、これに必要な記憶領域はセルそのものの冗長分とは別に最初から備わっている。さらに蓄電と放電にも泣く子をなだめるかのごとくあの手この手でセルの状態をより良い方へ持って行くためのきめ細かい制御が行われている事が想像できる。当然こうした制御も全てハード或いはソフトウェアによるプログラムで行われている事だろう。


ここまで色々書くと、そこまでやっているならば何も問題は無いではないか、と私自身も思えてくる。

が、それは恐らく気のせいというヤツだ。(もちろん心配事自体も気のせいと言えるかもしれないが)

いずれにせよ、QLCはTLCよりもあらゆる面で性能は下と見るべきだ。



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