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銅線が骨粗鬆症のように [ハードウェア]


現在の最先端IT技術は、二桁ナノメートル(大量生産では現在10nmが最先端)という極めて微細化の進んだ半導体製品の上に成り立っている。

もし微細化がここまで進まなければ、計算能力・コスト・消費電力の全てが足枷となって、スマートフォンも存在しなかった可能性がある。

そして現在、一般的なデスクトップパソコン用のCPUでも最先端は14nmであり、1~2年先は10nmや7nmでの製造が控えている。


このような現状で、素人の私は半導体製造の微細化に係る最大の足枷が、シリコンの板に光で回路を焼き付ける「リソグラフィ」の問題だと考えていた。

微細化の進んだ回路を作り上げるのに、1ミリの千分の一のさらに千分の一単位、ナノメートルの領域で正確に光を当てる部分と当てない部分を作り出し、光硬化樹脂の覆いで必要な部分が残るように処理し、不要な部分を科学的手段で取り除くという処理を繰り返すのだが、光が当たる部分と影の部分との境界がボヤけると回路を正確に作る事が出来ない。

しかも、現在はもはや普通の光の波長よりも微細な回路なのでただ単に光を遮るだけではダメで、そのために微細化技術の開発にはとても多くのお金と時間が必要になっている。

こうした問題を克服するため、より波長の短い光である「極端紫外線」を使ってCPUなどを製造する技術が開発されつつあるが、今の所この技術が量産品に使われた例を私は知らない。


ところが。

微細化が進むと内部の配線も当然に細くなるが、その配線に使われる金属、現在は銅だが、これの結晶の大きさとの絡みで極端に電気抵抗が増えたり、“エレクトロマイグレーション”という、金属に電流が流れると(以下Wikipediaからの引用)“電気伝導体の中で移動する電子と金属原子の間で運動量の交換が行われるために、イオンが徐々に移動することにより材の形状に欠損が生じる現象”が起きて、段々と配線がスキマだらけのボロボロになってしまうという事をつい最近(というか2~3日前?)知った。

コバルト金属が引き起こす20年ぶりの配線大改革
https://pc.watch.impress.co.jp/docs/column/semicon/1128069.html

その結果電流(電気信号)の流れが悪くなったり、最悪配線が切れたりするそうだ。電流が上手く流れないようになれば当然信号が正しく伝わらないのでエラーとなり、例えばCPUならばその時点で動作しなくなる。

もちろん、今までもエレクトロマイグレーションは普通に起きていたが、今まではそれほど大きな障害ではなかったようだ。しかし半導体製品の微細化が進むにつれ、この問題が大きな注目を集めるようになった。


しかしこの問題を解決する新しい手段を開発したというニュースを今日見つけた。

銅配線の微細化に伴う最大の課題を解決する、ナノ秒パルスのレーザーアニール技術
https://pc.watch.impress.co.jp/docs/news/event/1128982.html

この記事によると、それはレーザーで銅配線を一瞬加熱する事で結晶のツブの大きさを人工的に大きくする技術で、これにより配線の電気抵抗を下げ、エレクトロマイグレーションによる銅の流出まで減少させるというものらしい。

この技術が出る前は、銅よりも結晶粒の大きなコバルトというレアメタルを配線に使う手段が考えられていた。
が、素人でもわかる事は、コバルトは銅よりも電気抵抗が高く、値段も高いという事。使用量が少なく、配線の長さも短いのでこれらの問題の影響はそれほど大きくはないようだが、出来れば値段が安く、より電気抵抗が少ない材料の方が都合が良い。

当然、この技術は空気中でただ単にレーザーを当てれば良いわけではない。(空気中でそんな事をすれば逆にただでさえ細い配線が酸化して余計に細くなったり、或いは熱で蒸発してしまうかもしれない)

要はリクツは簡単でも望みの効果が得られる条件は極めて限られるため、暗中模索でこれを探り当て、さらにこれを実験室での成果で終わらせるのではなく大量生産で使える技術として確立しなければならないわけで、素人が普通に想像出来るようなシロモノではないのだろう。


この件について、少なくとも私は材料について多少の知識を持っていて、加工や熱処理の知識もあるので記事の内容を理解出来るが、そうで無い者にとってはチンプンカンプンかもしれない。

そんな人は、まずは電流が流れると金属は骨粗鬆症のようになる、と思えばいい。もちろん目で見える大きさの金属では目に見えるような変化など千年かけても起きないが、配線の太さが髪の毛の太さよりもさらに千分の一ほどの細さになれば、数年とか数十年という単位で少しずつそれが進行し、配線が切れる場合もあるというわけだ。

これを防ぐには、元々砂を固めたような構造の金属結晶を、一旦溶かして砂粒よりも大きな結晶の連続にする。これが記事に書かれている技術の本質である。リクツはともかく金属配線の骨粗鬆症は結晶が小さいほど進行が速いので、結晶が大きければ進行を抑え、ついでに結晶が大きいほど電気抵抗が減るので信号の通りも良くなると。

素人は、この技術に付いての理解はこの程度で十分だと思う。(それ以前に素人はこんな技術の理解など不要だろうが!)



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