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2018年のル・マン24時間耐久レースに強い違和感 [クルマ]

2018年のル・マン24時間耐久レースは、結果だけ見るとトヨタが初の総合優勝を果たした記念すべきレースだった。

私はこれを喜びたいという気持ちを一応は持っている。なにしろ日本車が総合優勝するのは1991年のマツダ以来2度目だし、日本を代表する自動車メーカーのトヨタがこれまで一度も優勝した事がない事実は不自然でさえあると思っていたからだ。


だが、今回のトヨタ初優勝を素直に喜べない気持ちが、喜びたい気持ちを遥かに上回っている。


今年のル・マンはかなり異常だ。

いや、ここ数年異常であったものが極まった、というべきかもしれない。

私はモータースポーツが好きで、私自身もレース参戦経験があるほどなのだが、レース引退後は隠居のジジイ的な状態で、外部の情報にほとんど興味を持てなくなった。だがしかし、それでも時折各方面のレースに関する情報を目にすると火が付き、ネットで情報を漁ることがある。


近年、ル・マンに違和感を感じ始めたのは何時からだっただろうか?
消えかかった断片的な記憶をかき集めると、レギュレーションにハイブリッド車両が追加された頃からだったように思う。

そしてその違和感を最も強く感じたのは2017年。あれ?ル・マンてこんなだったっけ?と思った。

違和感の最大要因は参加チームの内容。
最高峰のLMP1に、メーカーワークスがトヨタとポルシェしか居ない事だった。

しかもプライベーターを含めてたったの6台。内3台がトヨタという異常事態に、「ああ、ル・マンはもうダメだな」という感想が沸き起こった。

さらにワークスマシンを3台もエントリーする必勝体制のトヨタの、あまりに不甲斐ないレース内容。結果じゃない、あくまでレース内容だ。リタイヤの理由とか考えても、これまで勝てなかったトヨタはチームとして全然成長していない(というか劣化している?)と思った。

そしてさらに、トヨタ離脱による下位クラス(LMP2)のトップ激走と、修理で1時間以上もピットの中に居たポルシェの逆転優勝。

そのうえ完走した上位10台の内8台がLMP2で表彰台2位と3位もLMP2、というトンデモない事態に。

・・・ああ。こんな事ってあり得るのだろうか。

何かおかしいよ。


そして今年。2018年のル・マンも、去年と同様どころか、それ以上におかしい。

今年はなんとワークス参戦がトヨタのみ。

レギュレーション変更でLMP1クラスの参加台数は一気に10台まで増えたが、トヨタ以外の全てがプライベーターという内容に、ポルシェ離脱の理由もなんとなく理解出来る気がする。言葉にすれば「ここではもうやる事が無い」といったところか。

この10台の中、ハイブリッドはトヨタが走らせる2台のみであるが、今年のレギュレーションはハイブリッドが非常に不利な燃料規制が行われている。何故規制がハイブリッドに対し厳しくなったのかといえば、それは開発力(≒資金力)の差から来る競争力の差を平準化するためだ。

ハイブリッドのエンジンは開発力のある一部自動車メーカーにしか、競争力(解りやすく言えば馬力が高くて燃費が良く壊れないこと)のあるエンジンを作る能力が無い。環境問題の取り入れによって導入されたハイブリッドだが、ことレースとなると公平なルールとは言えなかったわけで、これがLMP1衰退の一因である事は間違いない。

そこで、ハイブリッドではない、安価で誰でも買える市販のレース用エンジンを使うプライベーターが、1台何億円(年間の維持費含む)もするハイブリッドエンジンを使う巨大自動車メーカーのチームと競争出来るようにレギュレーションの変更を繰り返した結果、こうなったわけだ。

だがそれによってか、自動車メーカーのワークスチームのほとんどが撤退して、残るはワガママお坊ちゃん率いる世界一金持ちのトヨタのみになってしまった。他のメーカーは厳しいレギュレーションに適合した、競争力のあるハイブリッドエンジン開発を継続する金も意義も失ってしまったからだ。(金は主に2014年のディーゼルショックによって。)

しかもいつのまにか、かつてメーカーワークスを退けて優勝するほどの力を持っていたプライベーター達も消えている。残るその他大勢の、ルール変更でなんとか競争力を得たチームとルール変更に合わせて急造されたクルマの組み合わせは、厳しいレギュレーションで競争力を減少させたトヨタにとってでさえ像と蟻のケンカであり、敵ではなかった。

そして当然のトヨタ総合優勝。

競争相手が自分達よりも遅いのだから、競争するまでもなく自動的に勝てるレースなのだ。 (トヨタが本気で競争するとどうなるかは昨年までの結果を見れば明らか)

コレって素直に喜べるのか。

私には、トヨタは一人でレースに出て、一人でゴールしたようにしか見えない。


もちろん、ル・マンがそんなに簡単ではない事を私は知っているし、LMP1に参戦するプライベーターのチームだって素人ではないしチームとしても強豪である事も知っている。だがそんな彼らが足元にも及ばないほど、トヨタは資金が潤沢で人もクルマも充実している上に経験も積んでいる(なにしろポルシェと対等に戦える力があるのだ)から、表向きはどのように見えたとしても今年のル・マンLMP1クラスは事実上トヨタだけが走っていたレースだったのだ。

これはポールトゥウインかつワンツーフィニッシュという結果から、そして後続との周回差が大きく開いている事からも理解出来ると思う。(というか、もう他のチームはトヨタに勝てないのわかっているから、最初から相手にしていなかっただろう。)


トヨタは始め、今年のル・マンに出るつもりが無かったという。だが世界耐久レースに参加する顔ぶれとポルシェの離脱は、トヨタのル・マン初優勝が約束されているようなものだった。

そしてこの状況でル・マンに出てしまうトヨタが情けない。

私個人としては、競争相手が居ないとわかった時点で出ることをやめて欲しかった。競争相手が存在しないレースで勝利したとしても、その勝利に価値など無いからだ。(まあ、無知で愚かな人々を喜ばせ、集金に利用する事は出来るだろうが)

地面に落ちたモチを拾って食う。これは、王者トヨタがするべきことではなかったはずだ。



参考:

List of 24 Hours of Le Mans winners
https://en.wikipedia.org/wiki/List_of_24_Hours_of_Le_Mans_winners

2015 24 Hours of Le Mans
https://en.wikipedia.org/wiki/2015_24_Hours_of_Le_Mans

2016 24 Hours of Le Mans
https://en.wikipedia.org/wiki/2016_24_Hours_of_Le_Mans

2017 24 Hours of Le Mans
https://en.wikipedia.org/wiki/2017_24_Hours_of_Le_Mans

ACO、トヨタ優位のEoTを認めるも、シーズン中の修正は「いつでも可能」
http://www.as-web.jp/sports-car/368969?all

ル・マン24時間のフルエントリー発表。(2017年)
http://www.as-web.jp/sports-car/121397?all

【順位結果】2017ル・マン24時間 決勝総合結果
http://www.as-web.jp/sports-car/133298

第86回ル・マン24時間レース エントリーリスト<LMP1&LMP2>
http://www.as-web.jp/sports-car/370401/2

【順位結果】2018ル・マン24時間 決勝結果
https://www.as-web.jp/sports-car/380946?all



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