複雑化するディスプレイ状況 [ハードウェア]
私は興味本位でパソコンに関する様々な事を調べるが、その中にパソコン用ディスプレイがある。
現在パソコン用ディスプレイは液晶パネルを用いるものがほとんど全てだが、この液晶パネルは非常に多くの種類があり、大雑把な形式だけでも「IPS」「VA」「TN」と3種類あり、それぞれの方式も新旧で複数種類あったり、技術を開発した会社や製品のグレードなどによっても種類が細分化されている。
そのうえ、ディスプレイとして製品化されると、パネル以外の要素も加わる事になって正に千差万別といった状況で、何も考えずに選ぶと買って後悔する事になりかねない。
もちろん“ただ絵が出ればいい”というのなら、何を買ったところで後悔などないのだろうが。
こうした中、近年はこれらに新しい要素が加わった。それは“HDR”と“広色域”である。
PS4 Proの不具合とされる問題について
https://17inch.blog.so-net.ne.jp/2016-11-20
過去にこのような記事も書いたが、今日はこの事にも関連する情報を見つけたので書こうと思う。
きっかけはAMDの提唱する“FreeSync”について興味を持った事だった。
私は3Dゲームなどしないが、最近新しくディスプレイを欲しいと思って色々な製品を見ていくうちにFreeSync対応ディスプレイというものが気になったため、調べる事にした。
すると昨年1月に“FreeSync 2”というものが出ている事を発見した。
西川善司の3DGE:AMD,HDR対応の「FreeSync 2」を発表
http://www.4gamer.net/games/295/G029549/20170101001/
この記事を読むと、FreeSync 2とはHDRに関する技術であり、従来のFreeSyncと異なってゲームのフレームレートの変化にディスプレイ側を同期させるものとは違う技術であるという。なので、FreeSyncとFreeSync 2の両方に対応するディスプレイがあり得る(というかFreeSync 2に対応する製品はFreeSyncに対応しないという事は製品コンセプト上ありえない)という事だ。
そしてこの記事を読み進めていくと、このような記述を見つける事になる。
“HDR対応において,ゲーム開発者が実際に現在進行形で困惑していることがある。(中略)現在のHDR対応ディスプレイデバイス規格において,「出力するディスプレイデバイスのHDR対応スペック」をアプリケーション(≒ゲームプログラム)側から取得する術はないからである。”
これを読んで私は思った。これではゲームどころかビデオでも、HDR表示が正常にされない場合が出てくるのではないか?
そしてこの話にはまだ続きがある。
“実際に販売されているHDR対応の4Kテレビ製品では,直下型バックライトを使用する上位機だと1000~1400nitくらいはある一方,エッジ型バックライトの液晶モデルや有機ELモデルでは600~800nitくらいしかない。こうしたテレビで,前述したような「1000nit想定」のHDR映像を映すとどうなるかと言えば,明るい部分が白潰れしてしまう。”
なるほど。
パネルの種類やバックライトの形式などによってもこれだけ違いがあるのか。
だとしたら、HDRの対応具合によって、表示内容を調整する必要が出るわけだ。
そしてFreeSync 2は、この情報をなんとかアプリケーション側に伝えて、表示内容の調整をしようという技術であるようだ。
ここまでの話をまとめると、HDR対応テレビ(もちろんパソコン用ディスプレイも)はHDR対応と言いながらもその対応内容は一貫しておらず、表現可能なダイナミックレンジの幅はまちまちであるということ。そして現状では製品ごとの能力をアプリケーション側で把握する方法が、HDRの規格自体に存在しない、という事だ。FreeSync 2はこの問題を解決するための技術であると。
というわけでHDRの話はここまで。次は“広色域”だ。
先に引用した記事の続きにはこの“広色域”の話も出てくる。
“広色域”とはディスプレイの表現できる色の範囲について、過去に存在した規格よりも広い範囲で色を表現できるように定めた規格についての事で、過去から現在まで一般的なパソコン用ディスプレイは「sRGB」という規格を基準に表現できる色の範囲を定めているが、これから“広色域”に対応するディスプレイは「BT.2020」という規格を基準に表現できる色の範囲を定めるようになる。
だが、“定めている”といってもその範囲は製品ごとにかなり異なる。わかりやすい例では、「sRGB」でも70%の範囲しか対応しないものから100%以上対応する製品があり、これはもちろん「BT.2020」に対応する製品でも同様。
つまり、“広色域”と言っても製品によって表現できる色と表現できない色に大きな違いが出てくるのだ。
記事にはFreeSync 2がこの色域や色空間といったものまで、接続されたディスプレイの対応範囲を取得する事でアプリケーション側の表現を調整させる機能を持つらしい事が書かれている。
この色域の問題で具体的な例を言うと、ものすごく濃い青を表現している画像を、この青が含まれる色域に対応しないディスプレイで表示するとその青の部分がそれより薄い青になってしまい、本来とは違う色になる。たとえばとてもめずらしい濃い青色の花が、どこにでもある普通の青い色の花になってしまう。
宝石などを表現しようものなら、色の濃さが正常に表現できなければ本来の美しさや価値がディスプレイ上に表現できない事になるのだ。
これはゲームなどでは画面上の“モノ”の識別に関わる部分であるため、今後「BT.2020」対応を前提にゲームを作るとディスプレイによって見え方が変わってしまい、極論すればプレイに支障が出る可能性もある。
もちろん、ゲームはしないが、写真を扱ったりビデオを見るとか編集するような人にも気になる問題だと思う。
この問題は今に始まった事ではないにしても、今後は色域について差別化を表に出した製品やそれを前提にしたコンテンツが一般的になる事で、ディスプレイを買う時にまた悩む要素が増える事になるのは間違いない。
というわけで、これまでは単に大きさとか見やすさや目が疲れにくいなどの条件で選びがちなディスプレイだったが、今後は明暗の表現範囲である「ダイナミックレンジ」と色の表現範囲である「色域」まで意識しないと困るようになる。
それでも気にしない、気にならない人ならばなんの問題もないだろうが、ゲームやビデオなどで払った対価にふさわしい本来の価値を得たいのならば、こうした事にも注意を払うべき時代が来たのだと、私は思う。
現在パソコン用ディスプレイは液晶パネルを用いるものがほとんど全てだが、この液晶パネルは非常に多くの種類があり、大雑把な形式だけでも「IPS」「VA」「TN」と3種類あり、それぞれの方式も新旧で複数種類あったり、技術を開発した会社や製品のグレードなどによっても種類が細分化されている。
そのうえ、ディスプレイとして製品化されると、パネル以外の要素も加わる事になって正に千差万別といった状況で、何も考えずに選ぶと買って後悔する事になりかねない。
もちろん“ただ絵が出ればいい”というのなら、何を買ったところで後悔などないのだろうが。
こうした中、近年はこれらに新しい要素が加わった。それは“HDR”と“広色域”である。
PS4 Proの不具合とされる問題について
https://17inch.blog.so-net.ne.jp/2016-11-20
過去にこのような記事も書いたが、今日はこの事にも関連する情報を見つけたので書こうと思う。
きっかけはAMDの提唱する“FreeSync”について興味を持った事だった。
私は3Dゲームなどしないが、最近新しくディスプレイを欲しいと思って色々な製品を見ていくうちにFreeSync対応ディスプレイというものが気になったため、調べる事にした。
すると昨年1月に“FreeSync 2”というものが出ている事を発見した。
西川善司の3DGE:AMD,HDR対応の「FreeSync 2」を発表
http://www.4gamer.net/games/295/G029549/20170101001/
この記事を読むと、FreeSync 2とはHDRに関する技術であり、従来のFreeSyncと異なってゲームのフレームレートの変化にディスプレイ側を同期させるものとは違う技術であるという。なので、FreeSyncとFreeSync 2の両方に対応するディスプレイがあり得る(というかFreeSync 2に対応する製品はFreeSyncに対応しないという事は製品コンセプト上ありえない)という事だ。
そしてこの記事を読み進めていくと、このような記述を見つける事になる。
“HDR対応において,ゲーム開発者が実際に現在進行形で困惑していることがある。(中略)現在のHDR対応ディスプレイデバイス規格において,「出力するディスプレイデバイスのHDR対応スペック」をアプリケーション(≒ゲームプログラム)側から取得する術はないからである。”
これを読んで私は思った。これではゲームどころかビデオでも、HDR表示が正常にされない場合が出てくるのではないか?
そしてこの話にはまだ続きがある。
“実際に販売されているHDR対応の4Kテレビ製品では,直下型バックライトを使用する上位機だと1000~1400nitくらいはある一方,エッジ型バックライトの液晶モデルや有機ELモデルでは600~800nitくらいしかない。こうしたテレビで,前述したような「1000nit想定」のHDR映像を映すとどうなるかと言えば,明るい部分が白潰れしてしまう。”
なるほど。
パネルの種類やバックライトの形式などによってもこれだけ違いがあるのか。
だとしたら、HDRの対応具合によって、表示内容を調整する必要が出るわけだ。
そしてFreeSync 2は、この情報をなんとかアプリケーション側に伝えて、表示内容の調整をしようという技術であるようだ。
ここまでの話をまとめると、HDR対応テレビ(もちろんパソコン用ディスプレイも)はHDR対応と言いながらもその対応内容は一貫しておらず、表現可能なダイナミックレンジの幅はまちまちであるということ。そして現状では製品ごとの能力をアプリケーション側で把握する方法が、HDRの規格自体に存在しない、という事だ。FreeSync 2はこの問題を解決するための技術であると。
というわけでHDRの話はここまで。次は“広色域”だ。
先に引用した記事の続きにはこの“広色域”の話も出てくる。
“広色域”とはディスプレイの表現できる色の範囲について、過去に存在した規格よりも広い範囲で色を表現できるように定めた規格についての事で、過去から現在まで一般的なパソコン用ディスプレイは「sRGB」という規格を基準に表現できる色の範囲を定めているが、これから“広色域”に対応するディスプレイは「BT.2020」という規格を基準に表現できる色の範囲を定めるようになる。
だが、“定めている”といってもその範囲は製品ごとにかなり異なる。わかりやすい例では、「sRGB」でも70%の範囲しか対応しないものから100%以上対応する製品があり、これはもちろん「BT.2020」に対応する製品でも同様。
つまり、“広色域”と言っても製品によって表現できる色と表現できない色に大きな違いが出てくるのだ。
記事にはFreeSync 2がこの色域や色空間といったものまで、接続されたディスプレイの対応範囲を取得する事でアプリケーション側の表現を調整させる機能を持つらしい事が書かれている。
この色域の問題で具体的な例を言うと、ものすごく濃い青を表現している画像を、この青が含まれる色域に対応しないディスプレイで表示するとその青の部分がそれより薄い青になってしまい、本来とは違う色になる。たとえばとてもめずらしい濃い青色の花が、どこにでもある普通の青い色の花になってしまう。
宝石などを表現しようものなら、色の濃さが正常に表現できなければ本来の美しさや価値がディスプレイ上に表現できない事になるのだ。
これはゲームなどでは画面上の“モノ”の識別に関わる部分であるため、今後「BT.2020」対応を前提にゲームを作るとディスプレイによって見え方が変わってしまい、極論すればプレイに支障が出る可能性もある。
もちろん、ゲームはしないが、写真を扱ったりビデオを見るとか編集するような人にも気になる問題だと思う。
この問題は今に始まった事ではないにしても、今後は色域について差別化を表に出した製品やそれを前提にしたコンテンツが一般的になる事で、ディスプレイを買う時にまた悩む要素が増える事になるのは間違いない。
というわけで、これまでは単に大きさとか見やすさや目が疲れにくいなどの条件で選びがちなディスプレイだったが、今後は明暗の表現範囲である「ダイナミックレンジ」と色の表現範囲である「色域」まで意識しないと困るようになる。
それでも気にしない、気にならない人ならばなんの問題もないだろうが、ゲームやビデオなどで払った対価にふさわしい本来の価値を得たいのならば、こうした事にも注意を払うべき時代が来たのだと、私は思う。