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Intelとニコンの関係 [雑談]


先日の24日、Intelは「IDM 2.0」というビジネスモデルに移行する事を発表した。

半導体生産で「委託」「受託」を両にらみ Intelが「IDM 2.0」構想を発表
https://www.itmedia.co.jp/pcuser/articles/2103/24/news102.html

IDMとはIntegrated Device Manufacturerの略で、「垂直統合型デバイスメーカー」という。

IDM2.0というのは、自社で一貫して設計から製造、販売まで行うだけでなく、他社からの受託生産や外部の半導体製造工場への生産委託までを行う事を意味するようだ。


一方でこの発表より前、Intelが完全なファブレス企業になるかもしれないという話が出ていた。

これはあくまで噂でしかなかったが、もしそうなった場合に困るのがモノ作りニッポンの企業であるニコン。

何故なら近年、ニコンの製造する半導体露光装置は大半がIntelに出荷されているからだ。

今回Intelが下した決定は、そのニコンにとって首の皮一枚をつなげる朗報となった事だろう。


ただし、だからといってニコンが生き残れる保証にはならない。

何故なら現在のニコンはEUVリソグラフィに使える装置を持たないからだ。

つまり、今後Intelが半導体の微細化を進めるのであれば工程の一部をEUVに置き換えていく事は絶対に必要なので、ニコンへの発注は減る一方になるのだ。


何故ニコンの半導体露光装置は大半がIntel向けなのか。

それはかつて世界の半導体製造シェアの多くを握っていた日本の半導体製造工場がほとんど消えた事が一つ、そして最後に残った大口顧客であるIntelの半導体製造工場が、自社のCPUを専門に製造する工場だった事に関係している。

IntelのCPUは半導体製造の中でも最先端をいくものだったが、同時に独自性が強く、露光装置へ要求する要件もある意味特殊だったようだ。

ニコンは良くも悪くも “特殊な条件にカスタマイズ可能な能力” を持つ企業だったため、Intelとは一蓮托生の関係を続けて来たわけで、そのおかげで他の半導体製造工場で必要とされる汎用性の高い露光装置を作れなくなってしまったのだ。

“作れなくなってしまった”というのは実際のところ言い訳にしかならないのだが、Intelが絶好調の間はTSMCやGlobalFoundriesなどの、Intel以外の顧客の事を重く考える必要が無かったと思われる。

従って、今後ニコンがASMLに対抗し得る半導体露光装置を開発出来ない限り(今はEUV露光装置開発から撤退しているが)、半導体露光装置の分野から撤退するか、現在のようにEUVを必要としない工程用に露光装置を供給し続けて生き残りを図るかしかないだろうと思われる。


ただし、ニコンの半導体露光装置はASMLなどと比較してスループット(一定時間で加工品が出来上がる数量)が低いとか、稼働率が低いなど評判が散々らしい。

こうした点も改める事が出来なければ、やはり生き残る事は難しいだろう。

今月頭にはデジカメ部門がかなり厳しいという情報が出た事もあって、会社の規模縮小 → 開発費の減少 → 商品が開発できなくなって倒産、という流れになってもおかしくはない。


まあ一部で比較的好調な事業もあるらしいが、昨年の時点でカメラ関係と半導体製造装置関連の売り上げが全売り上げの8割近い事から、当面はIntelがニコンの命綱であることは間違いない。


ニコン、カメラから撤退する日…過去最悪の赤字で危機、売上の5割が蒸発、デジカメ壊滅的
https://biz-journal.jp/2021/03/post_211003.html

ニコンと日立ハイテクが恐れる「インテルの選択」
https://news.biglobe.ne.jp/economy/0902/jbp_200902_9744374249.html

露光装置シェアトップのASML その強さの源泉は速度と稼働率
https://yunogami.net/ej/_src/984/EJ09%E5%B9%B48%E6%9C%88%E5%8F%B7.pdf

半導体露光機で日系メーカーはなぜASMLに敗れたのか
https://monoist.atmarkit.co.jp/mn/articles/1803/02/news039_2.html



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