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トヨタのハイブリッド特許公開について [クルマ]

少し前の話だが、トヨタがハイブリッド自動車に関する特許を公開した。

公開、というのはもちろん、他社が無償で特許に関わる技術を利用出来るようにするという事だ。

となれば当然、トヨタと、競争相手である世界中の自動車製造会社との競争力の差がグッと縮まる事は言うまでもない。


こうした事に対し、トヨタを心配する声は非常に多い。
これまで独占して来た技術を公開するという事は、メシの種を部分的にとはいえ手放す事を意味する。

もっとわかり易く言えば、特許を公開した影響で売り上げや利益が大きく減るのではないか、という事だ。


この問題に対するある視点からの答えが、記事として出ている。


トヨタ ハイブリッド特許公開の真実
https://www.itmedia.co.jp/business/articles/1904/15/news014.html


この記事を要約すれば、トヨタは環境問題に対し世界中のクルマをどんどんハイブリッド化する事で積極的に問題解決したい、という理由でハイブリッドの特許を公開したという話だ。

そして特許の公開による不利益はあまり問題にならないという。
要は今現在の技術はいずれ陳腐化するものなので、その先を現在進行形で開発中であるトヨタの利益にはそれほど影響が無いという事だ。

この点に私は同意する。
さらに記事中にもあるが、単に技術を導入すれば簡単にクルマが作れるという事は有り得ない。

クルマはノウハウのかたまりと記事に書かれているがまさにその通りで、過去にEVが普及すれば家電メーカーでも部品を買って組み立てるだけでクルマが作れるなどという暴論が出ていたが、それは言っている者の無知をさらけ出しているだけの事だ。

この点に対してもトヨタは積極的にノウハウの提供までやるという。

もし利益がどうこう言うのならば、むしろこちらの方が問題である。


さて、ここまでトヨタが無償で特許を公開した理由を、トヨタ側の言葉(記事はトヨタの副社長へのインタビューを元に書かれている)で表した。

記事の筆者は、この背景に過去アメリカで起きたプリウスの暴走事故に対するリコール問題を挙げている。

過去の問題では、公聴会でトヨタ側の言葉を誰も信じてくれなかったそうだ。

だから、日頃の行いを良くする事で企業イメージを上げ、何か問題が起きた時でもトヨタ側の言葉を信用してもらえるようにしよう、という事らしい。


という事で、ここまでは記事に書かれている事。

ここからは私の考えを書く。


現在「環境問題に配慮したクルマという事になっているハイブリッド、プラグインハイブリッド、電気自動車」のシェアだが、実はそれほど多くはない。

シェアが大きくない、という事はそのカテゴリーでの売り上げが大きくないという事だ。

そしてハイブリッド等の技術は、クルマを開発・製造するための工程を複雑化し、常に新たな技術開発が必要という意味ではこれまでの内燃機関のみの自動車と比べてメーカーの負担が非常に重い。

わかり易い例えをすると、戦闘機の開発だ。
戦闘機の開発はすでにアメリカですら自分達だけで開発するのに荷が重く、同盟国から「共同開発」という手段で金をかき集めてやっと、「先日空自で墜落事故が起きたF35程度の戦闘機」が出来上がる、という難しさである。

自動車もすでに世界の環境規制が厳しくなる中、これに対応させるという必要性から電気モーターと電池を動力の一部又は全部にせざるを得なくなっている。

しかしそもそも100年以上の歴史を持つ内燃機関は、燃料のエネルギー密度の高さも相まって動力性能や使い勝手という「クルマとしての絶対条件」が電気モーターを使うクルマのそれを大きく上回る。
これを技術の進歩で解決するのは何十年後になるかわからないほど困難であり、これが普及を大きく妨げているのだ。

そして枯れた技術である内燃機関は、それほど技術を持たない自動車メーカーでもそれなりに使えるモノが作れてしまう。

トヨタにとってはむしろそういう「とりあえず使えるクルマが作れてしまう」メーカーこそが邪魔であり、ハイブリッドを自動車販売の標準とする事で開発のハードルを一気に上げた方が商機が大幅に増える、というのが私の見方だ。

トヨタがハイブリッドの技術を、世界中の自動車メーカーに、特許や技術だけでなく製造ノウハウまで与えるという。

この行動は世界の自動車開発のハードルを一気に上昇させる。
(実際ル・マンのハイブリッドレーシングカーがトヨタのみになった事がそれを証明している)

すると、技術開発で世界一のトヨタは、自動的に世界での自動車販売シェアを大幅に増やす事が可能になるだろう。

トヨタがハイブリッドの特許を公開するという事は、つまりそういう事なのである。


参考

トヨタ、HV技術特許を無償開放 2万件以上のコア技術を利用可能に
https://www.itmedia.co.jp/business/articles/1904/03/news113.html

2018年のル・マン24時間耐久レースに強い違和感
https://17inch.blog.so-net.ne.jp/2018-06-21


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