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DRAMの置き換えが期待されるNRAM [ハードウェア]

一般的なパソコンのメインメモリは現在、DRAMが主に利用されているが、DRAMは1970年代からパソコンのメインメモリとして使われ続けている。

DRAMがパソコン用のメインメモリに使われだしてからすでに半世紀経つわけだが、いまだにDRAMなのである。

そんな中、過去にはDRAMを置き換える目的でいくつかの次世代メモリが開発された。

しかし今の所それらがDRAMに代わるメモリになる可能性はゼロだ。

その理由は性能とコスト。

性能がDRAMに劣るのなら話にならないし、性能が同等でも値段が高ければ普及しないからだ。


ところで先日、こんな記事を見つけた。


サーバー/PC主記憶DRAMの置き換えを目指すナノチューブメモリ
https://pc.watch.impress.co.jp/docs/column/semicon/1154254.html


今度はナノチューブメモリ(以下NRAM)というものが、DRAMの置き換えとして候補に上がったらしい。

私はこの記事を見つけるまでNRAMというものを知らなかったが、NRAM自体は2016年8月31にはすでに発表されていたようで、この時はまだ単に次世代不揮発性メモリ(より具体的にはNAND Flashの置き換えだと思われる)として発表されたようだ。

DRAMの特徴は、安価でそこそこ速い事と、寿命が事実上存在しない事であるが、過去に候補として上がったMRAMなどは性能面でも速度と寿命が大きく劣るものであり、その点NRAMはDRAMと同等の性能を示している事から期待が膨らむ。

またコストの問題についても、製造上の難しさなどを無視すれば面積辺りの容量はDRAMを超える可能性を持っている事から解決出来そうなのが良い。

DRAMは電気を貯めるキャパシタの存在により10nm以下のプロセスに微細化する事が極めて困難で、これが容量増加足枷になっている。このため、この先容量当たりの価格が下がりにくい状況になっているが、その点NRAMはDRAMのようなキャパシタが不要であり、記憶素子に使われるものがカーボンナノチューブで作られた抵抗器とトランジスタが一対になったものなので、10nm以下に微細化する余地が存在する。

今の所は構想とはいえ28nmで4Gbit(チップ1個当たり512MB)なので、8個で4GBのモジュールしか作れないが、将来的には7nmで64Gbitと16倍の容量まで見込まれている。

一般のパソコン向けにはそこまで容量は必要ではないが、サーバー用途であれば用途によってはDRAMの代わりにNAND Flashが使われ始めているくらいなので、この分野ではいくらでも必要とされるだろう。

また不揮発性である事は消費電力の減少と共に読み書き時のレイテンシ低減にかなり貢献する。DRAMは非常に短時間で書き込まれた情報が消えるので定期的にリフレッシュという再書き込み動作が必要だが、再書き込みのタイミングとCPUからの読み書き命令がカチ合うと再書き込みが終わるまで待たなければならない。
このため単純に信号のサイクルがDRAMと同等であったとしても、実性能はNRAMの方が上になるだろう。

さらに不揮発性なので電源を落してから再び電源を入れた時の起動速度が速い事は間違いないし、容量が大きければOSに必要な全てのファイルをメインメモリ上に置く事が可能になるので、さらに動作速度の向上が見込める。

また、現在はハードディスクやSSDなどのストレージ上にページファイルというものを置いて、メインメモリに入りきらないデータやプログラムを退避するという、仮想記憶という仕組みが使われているが、これも一般的なパソコンの用途であれば不要になるかもしれない。

しかも、記事には3次元クロスポイント構造という、Intelの“3D XPointメモリ”で有名になった構造を使う事でさらに容量を増やす方法があると書かれている。
ロードマップには512Gbitチップが描かれているので、かなりの高容量チップが作れるようだ。
チップ当たり512Gbitというと2018年現在のNAND Flash(256Gbit)よりも容量が大きいので、価格さえ安ければNAND Flashの置き換えも狙えるかもしれない。

3次元クロスポイント構造は速度低下の要因になるらしいが、ストレージ用途であれば現在のSSDとは比較にならない高速化が見込め、さらに書き込まれたデータの保持性能が300℃の高温下で10年以上と非常に優れている事も、SSDとして信頼性を確保するためにはプラスに働くだろう。



というわけで、NRAMという伏兵でなんとなく明るい未来が見えそうなパソコン用メインメモリ。

DRAMは韓国の2社とアメリカの1社による寡占状態が災いし、談合による生産調整が価格高騰を招いている(中国製のDRAMが出そうだという事と需要減退により最近価格が下がってきているが)が、NRAMは未開拓の分野であるために他社の参入障壁は低いと思う。

今の所はNantero社と富士通の合同開発という事でまったく先の見えない話ではあるが、もし富士通がNRAMのチップ生産を始めたらなら、現在DRAMを生産する会社に対し十分な競争力を持つ事は可能だろう。

ちなみに富士通は過去にDRAMを生産していた事があるので、NRAMの生産だってやって出来ない事はないと思われる。
もちろん日本企業の悪癖が出れば競走どころではないのだが。


メインメモリが無ければコンピュータは動かないので、NRAMがDRAMの置き換えになるような事があればNRAMの技術を握る事は非常に重い意味を持つ。

富士通には頑張って欲しいと思う。

※追記。富士通はNRAMを組み込み向け製品として生産するが、パソコン用のモジュールについてはまったく作るつもりが無いと思われる。私がここに書いた事は、富士通がどうにかしてくれないかなという希望でしかない事に注意。


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ちよちゃん

NRAMが、まさかDRAMの置き換えを狙っているなんて驚きました。

NRAM自体は結構前から知っていましたが、あの当時はまだ書き換え耐数が10億回(10の9乗)までしか出来ないって話だったと思ってたので・・・。
でも、どうやら10億回(10の9乗)書き換えても全く劣化の兆候が見られないって意味だったんですね。
書き換え耐数は1000兆回(10の15乗)に届くか否かで雲泥の差ですから、まさかMRAM以外でこの領域に届くメモリが誕生するとは思ってもいませんでした。
ようやくユニバーサルメモリになれそうなのが出て良かったと思います。
製品化も現実味を帯びてきてますから、どうなるか気になりますね。

ただ懸念は、カーボンナノチューブがアスベスト(石綿)と同類の発がん性があるという疑いが有ることですね。
これについては不明瞭な点が多く、カーボンナノチューブの長さが短いものは問題が無いという見方もあるらしい。
その辺りをもっと研究して、NRAMに使用するカーボンナノチューブに発がん性が無い事を証明するか、あるいは対応策を明確にしてもらいたいですね。
by ちよちゃん (2019-01-26 12:27) 

98式軍刀

ちよちゃん 様、コメントありがとうございます。

NRAMが額面通りの性能でDRAMの置き換えになれば、文字通り夢のような話です。
単純に同じCPUでDRAMとNRAMの場合の性能比較が出来れば、なかなか興味深い結果になるでしょうね。

ところでカーボンナノチューブの健康被害への懸念ですが、これは製品として市場に出た場合どうしようもないですね。
ただコンピュータのメモリ等に使われる量はアスベストと比べて極めて微量である上に、完全密閉されているので廃棄の時安易な方法で焼却でもされない限り問題にはならないと思います。

使われる場所が環境に露出していて、その量も桁が大きく違うアスベストと比較する意味はまったく無いのではないでしょうか。
by 98式軍刀 (2019-01-26 18:49) 

ちよちゃん

ご返信ありがとうございます。

やはりそう思われますか。
確かに曝露という点では密閉性で担保されているのはわかります。
ですが、過去振り返っても日本は品質先進国ではあっても環境先進国だった事はほとんどありません。
鉛フリーはんだについてもRoHSが先行してましたし、この手の話は日本は認識と対応が遅い印象です。
(例えば、今もストローなどのプラスチックごみ問題がありますね)

仮にNRAMがヨーロッパなどでRoHS的な規制が始まったら・・・という事です。
恐らく今のうちに解決しておかないと後々面倒な事になるようになると思っています。
週刊誌やマスコミ、環境(?)保護団体などネタが好きそうな方々はいらっしゃいますので。

まあ、何かしら対応は考えているのでしょう(思考放棄)。
色々あると思いますが、実際に採用されてこそ意味があるというものですから、
これからも頑張ってもらいたいです。

どうでもいい話を最後まで読んで頂きありがとうございました。
by ちよちゃん (2019-01-28 00:23) 

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