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USB Type-Cケーブルの品質 [USB]

USB Type-Cケーブルは、USB3.1規格に適合しなければならない(USB2.0 Type-Cケーブルは省く)。これは数ギガヘルツの超高周波信号を伝達させるという事。これに加えて最大で5Aという大電流を流せる容量が必要だ(電流はUSB2.0 Type-Cケーブルも含む)。USB2.0に対応していれば良い従来のUSB Micro-Bコネクタ採用のケーブルでは、周波数で1/10、電流でも1/10又は半分以下なので、要求される品質はケタ違いである。


ところで先日、私はこんな記事を書いた。

USB Type-Cは危ないから
http://17inch.blog.so-net.ne.jp/2016-04-13-1


記事中で品質が悪いケーブルを利用するとパソコンを破壊したり機器を認識しなかったりする話を書いたが、このケーブル品質に関する要素は大雑把に3つある。一つはコネクタの品質。二つ目は電線の品質。三つ目は組み立ての品質だ。


一つ目、コネクタの品質については、コネクタの寸法精度と端子の品質に分かれる。

寸法精度は説明するまでもなく規格に合った範囲内の寸法で製造されているかどうかという事だ。この寸法精度が悪いとコネクタが接続できなかったり、接続できてもはめあいがゆるくて簡単に外れてしまったりする事になる。また、最悪端子の位置が合わなくてショートなんて事もあり得るし、位置が合っていても寸法の狂いで端子の適正な接触圧が得られず電気抵抗が増す事も考えられる。

端子の品質は単純に考えれば、「端子は相手と接触していればOK」と思われるだろうが、実際そんなワケはない。特に大電流を扱ったり高周波の電流が流れる場合は接触している部分の状態(圧力とか面積とか)がシビアな問題になるし、端子のバネが悪いと一度刺し込んだだけで端子が変形してしまって接触不良になるケースもある。

usb_tannsi.jpg
端子の材質や形状が悪いと、一度変形したものが元に戻らなかったり接点の消耗が早く、接触不良を起こす。

端子に使われる金属部品は材質の良し悪しは当然のことながら、端子の接触圧に影響がある形状や寸法精度に加え、接触部の電気抵抗と耐久性に影響がある仕上げ(バリの有無や表面粗さなど)や表面処理(メッキやコーティングなど)がどうなっているのかは非常に重要だ。

USB Type-Cコネクタは端子数こそ多いが比較的単純な構造のコネクタなので、その辺の適当な工場でも道具さえあれば簡単に製造出来そうではある。しかし実際にはハイテク製品であり、高度な技術と品質管理があって初めてマトモに機能するコネクタが製造できるというワケだ。


次は二つ目の電線について。
ケーブルの主体である電線も、品質の影響は大きい。

信号が流れる電線は、信号の周波数が上がる分表皮効果によって電線の抵抗が増えるため、これに対応出来る高品質な電線が必要だ。またケーブルの長さが長いほど電線の影響は大きくなるので、選ぶ場合は必要以上に長いものは避けるとか、長さが必要な場合は品質に妥協しない姿勢が必要である。

電力を流す電線についても、電線が細すぎたり素材の銅が粗悪品だったりすると電圧が下がったり発熱→発火という現象が起きる。最大で1.8A流せるという規格で作られた、現在主流のMicro-Bコネクタを使ったUSBケーブルは、品質が悪いとスマートフォンの充電が遅いという事実が実験で証明されている。これが最大5Aも流れるType-Cケーブルになるとさらに高い品質が要求されるのは自明の理である。

中国製の電線は、コストダウンのために何がされているかわからない粗悪品が存在する。分野はまるで違うが、建築に使われる鉄筋がコストダウンのために引き伸ばして長さを稼ぎ、細く脆くなった物を使っているという事実もある。USBケーブルに使われる銅線もそういう類の粗悪品が採用されていてもおかしくはない。

USBに使われる電線は、単に電気が流れれば良いというわけにはいかないのである。


最後、三つ目は組み立て品質。
部品の品質がどれだけ高くても、組み立てが悪ければ全てが水の泡だ。

例えば電線の被覆。中の銅線は良くても、被覆の樹脂が悪かったりそもそも工作が悪くて被覆の厚みが一定でないと、被覆が破れて中の銅線がむき出しになったり、被覆の中で断線しやすくなる。また、信号に用いる線は2本ずつペアで捻る“ツイストペアケーブル”とするが、このひねり具合が悪いと当然ノイズ耐性が落ちる。同様にノイズ対策のシールド(アルミ箔などが使われる)を省略されたり、省略していなくてもコネクタのシェルと接続されていないとノイズ耐性は落ちて信号を正常に伝達出来なくなる。

usbCable断面.jpg
USBケーブルの断面図。USB2.0と3.0はこれだけ違う。USB Type-Cはこれらに加えさらに2本増える。
引用:USB.org


コネクタと電線の接続も要注意だ。ハンダ付けが悪ければそこが抵抗になるし、最悪断線やショートの原因になる。また、中国製の粗悪品は割と高い確率で配線を間違えて接続されている例もある。配線が間違っていれば検査で発見出来るが、品質の悪いケーブルを製造する工場は検査などしないから、当然にそのような不良品も出荷されてしまう。
USB Type-Cケーブルは配線の数が多いのでハンダ付けも大変だ。安価な製品が作られている、中国の小規模な工場では素人が手作業でハンダ付けするから、ハンダ付け不良や配線間違いも起きやすいと推測される。


以上、こうした理由でUSB Type-Cのケーブル品質は、今までのUSB Micro-Bコネクタのケーブルと比較して非常にシビアである事がわかると思う。

とはいえ、売っている実物を見てそれを判断するのは無理があると思うので、そこは信頼のおけるブランド品を買う事が一番安全かもしれない。


参考:USB Type-C 規格と試験のポイント


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