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HDDのSMR技術とはなにか [ハードディスク]

最近Seagateから出た容量8TBのハードディスクのニュースが、昨日辺りから各所で掲載されている。
話題となっているのはその価格。
現在一般に入手出来る唯一の8TB HDDはHGSTのUltrastar He8で、価格は円安が進んだ影響で8万円前後となっているが、Seagateの製品は4万円前後と予想されている。

容量当たりの価格が2~6TBの普及品に近い域まで下がっているわけで、これはUltrastar He8のような高コストの技術を使用しない、技術的にも安価な製品であるという事だ。
その8TBという容量を実現しながら普及品の価格になった要因は何かというと、それは“SMR”という技術という事になる。

SMRが採用された製品自体は11月に先行して発売された、Seagateの5TBの製品がある。
プラッタの容量は5TB製品が1.25TB、8TBの製品が1.33TB。
これは一体どういう事なのだろう。
発売時期の近さから、恐らくプラッタそのものは同じモノを使っていると想像するが。
これはあくまで私の想像であるが、SMRを採用した事と関係があるのではないかと思われる。


ではSMRとはどんなものか、考えてみよう。
調べたところSMRは“Shingled Magnetic Recording”の略で、日本語に訳すと「瓦記録」となるらしい。この「瓦」という部分を想像してみると、瓦は互いに少しずらしながら上に重ねて設置される屋根建材であり、SMRも同様に直前に記録したモノの上からずらしつつ重ね書きしていく。
SMR.png
このように図を見ればわかる通り、記録密度は記録ヘッドをどれだけ移動させたかで決まる。
ここでピンと来る人もいるだろう。
そう、記録密度はプラッタとヘッドが同一であっても、ファームウェアのパラメータをちょっと変えるだけで変化させることが可能なのだ。
とはいえこのような方法で記録密度の向上を図るにも磁性膜の物理的限界はあるし、読取りヘッドの性能の限界もある。その限界が1.25TBと1.33TBの差という事なのだろう。


というわけで、主に私の理解の及ぶ範囲と想像でSMR技術について書いてみた。
なのでSeagateの5TB及び8TBの両製品において、実際にはプラッタもヘッドも専用に調整されたものが使われている可能性もあるが、SMRのイメージについて間違いは書いていない。
ちなみにSMRを用いた製品はこれら以外にもHGSTの10TB製品であるUltrastar Ha10があるという。
あれもSMR使っていたのか。

2015/10/01追記
SMRについてさらに詳細な記事を書いたので、興味のある方はこちらも読んでみてください。
SMRのSSD的書込み挙動
https://17inch.blog.so-net.ne.jp/2015-10-01

また、SMR以外の技術について興味がある方はこちらを参照。
パソコン用ハードディスク大容量化の歴史
https://17inch.blog.so-net.ne.jp/2015-09-28


さて、他にHDDの記録密度向上の技術は今私の知る限り、熱アシスト記録(HAMR)とパターンドメディアがある。
こちらは何時くらいに来るのだろうか。

HAMRについては10月にTDKからの発表があったばかりで、製品化は2016年内が目処となっている。

パターンドメディアはまだ研究段階なのか?
少し調べた程度だが、HGSTと東芝、他に大学等の発表した記事がいくつか見つかった。
パターンドメディアとは、現在の不揃いな大きさの磁性体を不規則に敷き詰めたプラッタに対して、大きさを揃えた磁性体を規則正しく並べたプラッタの事で、これによって磁束の密度や強度が安定するために記録密度を上げる事が出来る。イメージとしては砂利道に対してタイル敷きの道という感じか。
しかし一桁ナノメートル(東芝の資料では直径8nm)の磁性体を規則正しく並べるという技術が、私には想像できない。自己組織化配列制御とかなんとかいう技術があるらしいが・・・

それに資料を読むとガラス円盤にミゾを彫ったりするらしいが、10ナノメートル幅のミゾを同心円上に彫ってヘッドをそれに追従させるとか正気の沙汰ではない。

どれだけ高精度にプラッタの円盤をスピンドルモーターの軸に固定したとしても、回転軸のブレは最低でも千分の一ミリ台で必ず発生するからだ。ナノメートルは千分の一ミリのさらに千分の一だから、仮にブレが千分の一ミリだったとしてもガラス基板に刻んだミゾを軽く100個以上またいで振動しているわけで、しかもそれは熱や振動等の影響で方向も振動幅もかなり不規則に発生する。このブレは当然面方向だけでなく軸方向のブレも存在し、プラッタは常に360度のどちらかの方向へ傾き、その方向を複雑に変えながら回転している。
つまりナノメートルの視点で見れば、回転が落ちて棒から落ちる寸前の皿回しの皿のように、回転方向だけでなく軸方向にも不規則にぐわんぐわんと揺れがらプラッタは回転しているのだ。
まあそれを言ったら今現在のハードディスクだって、回転のブレに対応する技術が無ければ使い物にならないのだが。

しかしこういう事を考えるとハードディスクというのは如何にハイテクなのかがよくわかる。
話がだいぶ逸れてしまったが、今日はこの辺で終わろう。


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コメント 2

NO NAME

あるまとめサイトにてSMR採用のHDDの記事(記事にはSMRの記述はなく8Tの価格が4万以下ということが主眼)があり、米欄にてSMR採用の指摘があり自分はSMRが初耳だったのでググった所こちらにお邪魔させていただきました。

また、後半の熱アシストの件についても興味深く拝見させていただきました。また、後半の熱アシストの件についても興味深く拝見させていただきました。

どちらもとてもわかりやすい説明で、自分のような機械音痴の自分にもたやすく理解することが出来ました!
では、失礼します。




by NO NAME (2015-01-31 12:50) 

98式軍刀

コメントありがとうございます。

お役に立てて幸いです。
by 98式軍刀 (2015-01-31 18:18) 

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